2023-01-01から1年間の記事一覧

キササゲで儲けた栗原廣三

『自伝対談 薬学の創成者たち』は伊沢凡人編著、研数広文館発行、昭和52年12月発行。伊沢が聞き役となって、21人の薬学者たちに自伝を語ってもらってゐる。それぞれの扉ページに略歴があり、人名事典の項目のやうに詳しく書いてある。 文学者の家族も…

森比呂志の母「一人じゃ御輿は担げない」

『川崎物語 漫画家の明治大正昭和」は森比呂志著、彩流社、昭和59年11月発行。森は明治45年4月、神奈川県生まれ。漫画家だが絵は表紙回りと各章のとびらだけで、文章で自身の生ひ立ちや川崎の情景をつづってゐる。父は石工の監督をしてゐて、暮らし向…

吉澤貞一「整理していないラベルはただのガラクタ」

「手のひらのメディア 吉澤貞一マッチラベルコレクション」は千葉県立中央博物館の展示。会期残り僅か。 「第一章 マッチラベルを集めた人たち」はマッチラベル収集家、吉澤貞一の紹介。千葉・旧成東の出身で慶応の学生時代から収集し、総数70万点といはれ…

興奮して読めなかった『独歩全集』

『白梅』は岩手県立盛岡高等女学校報国団発行。昭和17年3月発行が第31号。年刊のやう。報国団は校友会を発展的に解消したもので、16年5月22日に結成式が行はれた。 直前の5月12日から16日にかけて、精神修養のために六原青年道場での入場体験…

吉田秀雄「正力、前田の爪の垢を煎じて飲め」

『新聞時代』は新聞時代社発行。昭和33年3月発行の第7集は3巻1号。前田久吉が作家の川口松太郎と対談してゐる。題して「新聞の鬼“前田久吉”」。川口の質問に前田が答へる形になってゐる。 東京進出について、次のやうに語る。 東京は政治の中心、大阪…

頭山翁「お鯉は女野郎だ」

『同行』は同行社発行、昭和29年11月号は第4巻第11号。発行編集兼印刷人は齋藤加世。常時執筆者として石橋湛山、西尾末広、大島豊、三木武夫の名がある。 随筆や引用などを載せてゐるが、特色はゴシップ集にある。52ページのうち23から50ページと…

西郷徳男「ピントはずれもいいとこでした」

『語りつぐ昭和広告証言史』は渋谷重光著、宣伝会議発行、昭和53年5月発行。表紙の文字の上部が切れてゐる。書名も凡庸だが、実際は『戦前戦中戦後 広告業界うらおもて』といったところ。広告業界の関係者の証言集で、現代とかけ離れた業界の様子を伝へる…

檜山御陵造営を請け負った大江功造

『大正乙女』は清水光子著、生野重夫発行、昭和61年5月発行。西武百貨店製作。故人の一周忌に際して、身近な人々に限って配布された。時代や人の切り取り方が巧みで舌を巻いた。小説の原稿は段ボールいっぱいにあり、校閲も入ってゐたといふが原文のまま…

梅風「書籍を読むは人の天職にはあらざるべし」

『二 十世紀 新論文』は小宮水心編、立川文明堂発行、大正11年4月発行。手のひらに収まるポケット判。小宮は手紙や文章の書き方に関する本を多く残してゐる。本書はいろんな青年男女の短文を集めたもの。名字はなく下の名前だけ。執筆者の来歴などはよく…

鹽谷不二雄「読書の前には二、三十分の休憩が必要」

読書の秋なのでたまには本でも読まう。でも本を読むと疲れてしまふ…。そんな人には鹽谷不二雄「読書しても疲れぬ法」『健康時代』(健康時代社、昭和11年7月号)。 長時間の読書には目を大切にしなければならない。眼に異常があれば眼科医に眼鏡を選定し…

岩戸町の盲女を助けた正木彦二郎

掘り出した。『橙陰遺稿』は奥付なし、はしがきは大正11年10月。正木彦二郎(号は橙陰)の漢詩、和文、追悼の詩文をまとめたもの。 正木は慶応3年7月、熊本生まれ。元田永孚の下で学び、詩文に長じた。参謀本部出仕。陸軍省で戦史編纂に従事。のち川崎…

若宮卯之助に片寄ってゐるといはれた茂木久平

『東京案内』は黄土社発行、第2巻第2号は昭和30年2月発行。表紙は三浦乃亜。「東京を知りたい知らせたい雑誌」を謳ふ。 この中で「早稲田大学の青春」と題して、尾崎士郎と茂木久平が対談してゐる。尾崎の全集の年譜には記載がなかった。日比谷の陶々亭…

水谷川忠麿が書き残した河童の国の彼等

『角』は奈良「角」の会編集、鹿鳴荘発行。天理時報社印刷。昭和33年7月発行の第3号は32ページ。表紙は棟方志功。奈良ゆかりの人物が1ページづつ随筆を書いてゐる。 松本楢重は春日大社のリンゴの木のこと、蓮實重康は自身の小用譚。前川佐美雄は名前…

北町一郎のユーモア小説「神様の引越」をめぐって

『蚕糸の光』は全国養蚕販売農業協同会連合会発行。昭和30年1月号は第8巻第1号。杉浦幸雄の連載マンガ「おきぬちやん」、山岡荘八の連載小説「戦国佳人」、大原富枝の連載小説「三つの幸福」などが載ってゐる。 面白く読んだのは北町一郎のユーモア小説…

三宅捨吉の牛が怖かった奥平恭昌

『三宅捨吉自叙伝』は奥付なし、息子の三宅嘉十郎による序文の日付は昭和7年10月24日。 三宅捨吉は安政元年、紀州藩士の四男として生まれた。高野山寺院の住職の下で働く。焼失した幡川薬師を復興するなどしたが、上京して漢学の塾を開き、学習院の教師…

田邊勉吉が会った弁天町の先生

『長興山随筆』は田邊勉吉著、発行者田邊輝雄、大正15年6月発行。著者は住友銀行や久原鉱業で勤務し、重役も務めた。田健次郎訪問中に発病し、以降亡くなるまで長興山荘で静養した。その間に書いたものなどを櫻井鷗村が編集したのが本書。櫻井曰く 不得要…

「神楽殿を児童図書館にするのも一案」

『神社運営法 第一輯 ―小規模神社問題解決のために―』は岡田米夫編輯、神社本庁発行、昭和38年5月印刷。発行日の表記なし。表紙では神社本庁調査部の名義。 本務神社、兼務神社に分けて、神社経営の改善策を探るもの。関東の神社を調査してまとめられた。…

 三吉の母「古本一冊位取つたからつて」

『子を観るは親』は前川康太郎著、昭和7年11月発行、愛護会本部・愛護会東京本部発行。家庭教育の重要性、不良児を生む家庭の実例などが載ってゐる。 「古本一冊位ゐが何んですか」は古本の万引少年の話。各地の実例集から選んだもので、著者名は不明。街…

台風祓除会の山内崇啓教祖

『週刊娯楽よみうり』(読売新聞社発行)昭和31年9月28日号には、面白い記事が2つある。 1つは「二尺七寸の豪傑」。西南戦争に参加した井上新を取り上げたもの。出生は万延元年ではないかといふ。長兄はのちの海軍中将、井上良知とあり、これは井上良…

ハマグリで折口信夫の小説を釣らうとした石丸梧平

『人生創造』は石丸梧平の個人雑誌。人生創造社発行。昭和13年3月号は通巻169号。「冬の夜の長談義」は石丸の近況の中に、折口信夫との交友の様子が描かれる。 年末、折口に生蛤を一箱送った。めったに手紙を書かない折口だが、珍しく長い礼状が来て驚…

山口二矢を演じた神野猛

『漫画夢の博物誌』は東京三世社発行。第3号は平成2年5月発行。隔月刊。 表紙・巻頭カラーは山田彰博「おぼろ探偵帖」。ろくろ首や泉鏡花が登場する。日野日出志「赤い目のネズミ」はネズミの祟りで右目が破裂するホラー。目次では日野目出志と誤植。 衣…

お餅を毎日食べる大妻コタカ

『人生創造』は人生創造社が発行する、石丸梧平の個人誌。第171号は昭和13年4月発行の臨時増刊。 石丸は困ってゐた。3月号が大槻憲二の「恋愛・性欲の分析処置」により禁止・削除になってしまったから。「全く意外」「これはまゐつた」。 経済的にも…

大阪を破壊し名古屋を壊滅させる長岡外史

『飛行界の回顧』は長岡外史著、航空時代社発行、昭和7年12月発行。8年1月再版。装丁は長女の朝吹磯子。空を飛ぶペガサスが一面に描かれてゐる。 著者の日頃の主張や回顧録、衆議院議員としての行動をまとめたもの。飛行機の重要性から防空思想や都市計…

森秀男「ここまで狂信的になってしまったら処置なしです」

『村の迷信』は森秀男著、全国農協婦人組織協議会発行、昭和34年10月発行。生活改善シリーズの一つ。地味な書名と表紙だが、実は世間にはびこる迷信をバッサバッサと斬ってゆく快著。 お地蔵さんなどを撫でると、その部分の病気が治るといふ伝説があるが…

中屋健一「あたら一生を棒にふるようなことも」

続き。『漫画読売』には他にも「ブンヤ・シリーズ」として、新聞にまつはる文章がまとめられてゐる。「婦人記者奮戦す」は鷲尾千菊の回顧記事。挺身隊になるのを逃れるため、仏教新聞社で宛名印刷や整理として働いてゐた。「仏教界のイザコザやら何やら、一…

火星からのスパイ、火野星平

『別冊 漫画読売』は読売新聞社発行。第4集は昭和31年9月発行。一コマ漫画、四コマ漫画、連続漫画、イラストと文章などさまざま載ってゐる。三島由紀夫の随筆や石原裕次郎の座談会などもある。 「空想小説 ぼくは火星人」の作者は横山隆一。大きな学生帽…

松村たけ「女子が作ったものだけで博覧会を開きたい」

『修身教育 子供演説』は斯波計二著作兼発行、学友館発兌、明治22年12月出版。子供の演説を集めたもの。…の筈だが、名前が日本桃太郎や甘井菓子郎、鞠子倒助(ころすけ)などとおちゃらけてゐる。著者が創作した架空の人物のやうだ。しかし発想は現代人…

本を売って遊ぶ金にした千家紀彦

『背徳の家の子 わが非行体験を告白する』は千家紀彦著、番町書房発行、昭和38年10月発行。ポイントブックスといふ新書シリーズの一冊。カバーデザインは芦立ゆうし。 副題の通り、著者が自らの非行を告白するものだが、主に青少年期まで。刑務所に入る…

大日本政治刷新期成連盟の頭山

『決定版マンガ暴力団対策法 明日への希望』は警察庁暴力団対策法研究会の原作・監修。ぎょうせい発行、平成4年8月発行。登場する団体名・個人名は架空のもの。 同年3月に施行された暴力団対策法を分かりやすく伝へ、市民の被害をなくさうといふもの。推…

有元英夫「おかずがなければ御飯はたべられない」

『俗名さん』は有元英夫著、有元英夫遺稿刊行会発行、昭和35年6月発行。有元は明治20年2月岡山県生まれ、昭和34年6月没。 遺稿刊行会は家の光協会内に置かれた。『家の光』は農業者向けの雑誌で、月刊誌として最大部数を発行したこともある。有元は…