頭山翁「お鯉は女野郎だ」

 『同行』は同行社発行、昭和29年11月号は第4巻第11号。発行編集兼印刷人は齋藤加世。常時執筆者として石橋湛山西尾末広大島豊三木武夫の名がある。

 随筆や引用などを載せてゐるが、特色はゴシップ集にある。52ページのうち23から50ページと、約半分を占めてゐる。

 本多静六がドイツに行くのは愛人に会ふためだとか、下衆な内容ばかり。ゴシップ子は井箆節三から改名した井乃香樹を訪問。70歳でも夫婦生活を営み、夫人の方から求めてくる。万葉集の本を出版するため金策に走ってゐる。

 9月18日の、お鯉の建碑式のことも書いてゐる。お鯉は桂太郎の愛妾として知られ、のちに目黒の羅漢寺の住職をしてゐた。この年は七回忌。頭山翁のお鯉評を載せてゐる。

「…男でも筋が一本通らないクニャクニャした男女郎というのがあるが、お鯉は背骨一本通つている女野郎だ」

 女らしい女ではなく、男のやうな女であることを褒めてゐる。高場乱を思ひ出したのだらうか。 

 岩田芙美夫が出てくるが、これは大化会の岩田富美夫のことだらう。「年増泣かせ」のあだ名とその由来を記す。