「神楽殿を児童図書館にするのも一案」

『神社運営法 第一輯 ―小規模神社問題解決のために―』は岡田米夫編輯、神社本庁発行、昭和38年5月印刷。発行日の表記なし。表紙では神社本庁調査部の名義。

 本務神社、兼務神社に分けて、神社経営の改善策を探るもの。関東の神社を調査してまとめられた。冒頭、神職の独特な位置についてかう述べる。

私達は、ただ喰うだけ、生きるだけのために神職をしているのではない。楽な生活、経済力だけを追求していくなら、外の職業を選んだ方がよい。

 経済的に恵まれなくても神社を維持運営するためには、兼業をしなければならない。兼業にふさはしい職業として、民生委員などの13の名誉職、次いで学校教員、官公吏員、公民館長などを挙げる。公共的で模範となることが考慮されてゐる。「農業はもとより、果樹、椎茸栽培、養鶏等」も個人としてはふさはしい。実際の兼業は農業が多い。現在は本書刊行時よりも農業人口が減少してゐるので、状況は変はってゐるだらう。

 社殿の有効利用を論じた箇所では、地方の神職が神楽殿児童図書館にすることを提案してゐる。神楽は一年に一、二回しか奉奏されない。それ以外の大部分の時期を簡易な児童図書館にする。

楽殿の周囲にガラス戸を立て、書棚、机を用意すれば、簡易図書室が出来る。例祭に神楽を奏する必要があるときは、一時ガラス戸その他を徹却すればよい。

 必要な図書などは氏子に呼び掛けて集めてもらふ。

 社務所の一画に児童図書館を開設することも望ましい。市町村図書館や巡回文庫のブランチとして組み込んでもらひ、図書や雑誌の配本を受けることにも言及されてゐる。

 兼職の場合と同様、神社の公共的な性格を汲んだ提案となってゐる。

 

 

・専門書の中に出現した謎部局、宮内庁神社局。