2023-01-01から1年間の記事一覧

怒ると言葉が丁寧になる大谷光瑞

『上海へ渡った女たち』は西沢教夫、新人物往来社発行、平成8年5月発行。面白かったので文庫などで再刊してほしい。 ユダヤ問題の研究家になる新明きよ子、男装の麗人といはれた川島芳子、大谷光瑞の秘書になった井上武子の3人について、魔都・上海を絡め…

杉田直樹「大学の教授等は疲れない」

『講演時報』第690輯は昭和18年4月下旬号、4月25日発行。時事通信社発行。名古屋帝大医学部教授、医学博士の杉田直樹「民族力と精神衛生」が活字になってゐる。 精神医学と統計と偏見がない交ぜになった内容で、現代の価値観と隔たりが大きい。読むと…

高速度滋養料、どりこの

『どりこの』は8ページほどの冊子。「召上る前に御一覧下さい」の文言や、価格の記載がないことから、どりこのの商品に同梱されたものではないだらうか。昭和15年4月、大日本雄弁会講談社商事部発売。 表紙には何かを飲んでゐる人の像。中身は高速度滋養…

山本徳三郎「神はそんな窮屈なものでない」

『壺中之楽 一名「絶対禁酒」反対論』は山本徳三郎著、岡山の細勤舎書店発行、大正10年5月発行。 著者の序文に書名の由来が書いてある。もともとは「飲酒の心得、酒を清く飲む法」であった。これを見た太田といふ人が、もっと世間の人の目を引くやうにと…

田畑与三郎「天孫降臨は2月4日」

『流れ』は「流れ」社発行、昭和32年11月発行号は第5巻10号。田畑与三郎が「肇国節制定について」を書いてゐる。本文では「(資料)肇国節(国の初を祝ふ日)制定について」。 日本の建国については日向建国説と大和建国説があり、戦前は日向説が教科…

金谷真「建国祭の前に始国祭」

『神武開国』は金谷真著、みそぎ会星座連盟発行、昭和32年1月初版発行。手元のものは43年1月発行。32ページの冊子。 金谷はみそぎの大成者、川面凡児の弟子で伝記も書いてゐる。 「日本の国は建国したのではない開国したのである」といふ論文がこの…

品川区には品川神社

『ぼくらは東京調査隊』は手塚プロダクションの堀内元の作・画。特別区協議会発行、昭和61年8月発行。手塚風のタッチで東京23区の特色や役割について解説する漫画。 主人公のオサムは小学3年生。番長のガンセキにいじめられてゐるところを、金髪で袴を…

泉鏡花が好きすぎて一緒に寝た久保より江

『青年日本』は青年日本社発行。大正3年5月号が2巻5号。いくつか同名の雑誌があるが、これは雑賀博愛編集のもの。 硬い政論記事が並ぶなか、大正博覧会の見聞記事がある。しかし全体に点数が辛い。東洋趣味が欠落してゐて不愉快で、「浅薄なる西洋趣味の…

神道も忍術も学んだ鈴木康哲

『ご縁に生かされて』は鈴木康哲著、高輪出版社、平成8年12月発行。非売品。公的機関の所蔵不明の希書。巻頭のカラー写真ページは自身の結婚式や娘のバレエの様子、社員旅行など個人のアルバムのやう。文章は6割が会社員時代のもの。そのほかの部分に神…

頭山翁への荷物を運んだ富永直樹

『彫琢抄』は富永直樹著、発行者は息子の富永良太、平成19年4月発行。装幀片庭瑞穂。 富永は本名、良雄。大正2年5月、長崎県生まれ。平成184月没。彫刻家として多数の像を作品を制作した。正田英三郎、田中角栄、福田赳夫、佐久間象山、グラバーなど…

辰野隆を心の拠り所にした越田辰次郎

『藝林』は芸林社発行、昭和39年6月発行号は第31号。2月28日に亡くなった仏文学者、辰野隆の追悼号。歯科医の越田辰次郎が辰野の思ひ出をつづってゐる。 初めは辰野家の女中、おさくさんが出っ歯の治療にやってきた。それから夫人や辰野本人も来院し…

前田久吉「どちらが本家か分からなくなるものじゃ」

『新聞裏街道をゆく』は船津重人、新聞展望社発行、平成21年3月発行。定価6000円。『新聞展望』の昭和27年4月から29年12月発行分の中から、記事を抜粋したもの。解説や注釈などはなし。 新聞の拡張や経営に関する業界記事が多いが、興味深いも…

松井翠声「この雑誌は正に反動である」

『旅の装い』は交通道徳協会発行。第2号は昭和33年7月発行。ちょっと変はった名前だが、旅行や交通機関の記事や随筆を載せる。ファッション雑誌ではない。 漫談家の松井翠声が「旅に道徳するのは反動である」を書いてゐる。本文では“反動”表記。松井は発…

鼻が利かない煙山萩子を描いた村山鳥逕

『乾胡蝶』は村山鳥逕著、祐文社、明治40年7月発行。画は橋本邦助。村山は尾崎紅葉門下生らと交友があった小説家、牧師。この本には宗教的な内容はない。書名からはわからないが、収録された8編の小説には必ず夫婦の会話が出てくる。いろいろな夫婦が登…

ひので字で書かれたムッソリーニ

『起て白人種!』は大日本太陽会発行。昭和8年1月発行。内容は、以前新聞に載ったムッソリーニの文章をひので字に翻訳したもの。表紙の書名の下にあるのがひので字。神奈川県の中村壮太郎が創案した。本文16ページのうち、実際の訳文は3~11ページ。…

四大厄難に遭った小山進

『大教正小山進傳 附『歌集』』は足立幸太郎著、昭和14年1月発行。神道大教正、小山進の伝記と歌集。 小山は天保7年、信濃国飯山町生まれ。明治41年10月没。忠太郎ともいった。幕末の志士として東奔西走、平田派国学者らと交はった。生涯に4つの厄…

東京毎朝新聞が認めた喫茶店ゴロナ

漫画やドラマなどに登場する架空の新聞、毎朝新聞。過去にはいくつか実在した。手元のものもその一種。『東京毎朝新聞』は東京都豊島区の同社発行。昭和9年12月9日発行号は第2065号。1部2銭、1カ月50銭。定価から見ても、おそらく表裏2ページ建て…

呪祷改元の葉書を送った久松真一

『後近代体究』は神奈川・平塚の後近代体究所発行。第2輯は昭和56年2月発行。久松抱石資料誌とあるやうに、久松真一(号は抱石)にまつはる資料や関係者の寄稿を載せる。 久松は京大教授も務めた哲学者、仏教学者、思想家。受講者の講義ノートや、久松の…