古川緑波が見た生大黒様

『川柳祭』は川柳祭社発行、昭和24年10月号に古川緑波が「シヨウコンシヤ」を書いてゐる。招魂社、つまり靖国神社のこと。といっても、すべて春秋の祭りにやってきた見世物小屋の様子を描いてゐる。明治36年生まれで10歳に満たない頃のことといふか…

清家正「電車の中でも立ちつゞけ得る健康と若さを誇れ」

『教育修身公民研究』は精神文化学会発行。復刻がある。臨時増刊号の日本的錬成教育方法研究特輯は昭和17年11月発行。 三井甲之の「臣道感覚錬成の教育法」があるが、これは談話と著書の引用をつなぎ合はせたもの。理由はわからないが「執筆など絶対せぬ…

成瀬文学博士「火星とは何処か外国の町の名前ですか」

暖かくなってきた。 『衛生新報』の明治41年5月号は通巻81号。衛生新報社発行。「男子罵倒論」の黒光女史は相馬黒光だらうか。青柳有美に反論してゐる。もしも現在の男性と女性の立場を入れ替へたならば、女は男以上の好成績を収めるに違ひない、と自信…

裏口からソット逃げ出す坂井杉三郎

『あなたの明日をつくる接客理論』は坂井杉三郎著、昭和37年3月第2版発行、国際理容協会出版部発行。坂井は明治43年2月、京都生まれ。昭和4年から亡父の後を継ぎ理容店を経営してゐる。理容関係の役員、特別講師などを務める。 接客理論といふと堅苦…

正雄少年のお見舞ひはカステラと少年雑誌

『模範少年』は文盛堂編輯部編、榊原文盛堂魚住書店発行、大正5年1月発行。日記風の体裁で、正雄少年の善行が記されてゐる。模範的でない悪事も描かれるので、当時の世相をうかがふこともできる。 最初は3月26日。お母さんが父の墓参りに行かうといふ。…

黒神直久「中小神社が神社界の基盤なんですよ」

『人間 黒神直久』は富田義弘著、山口新聞社発行、平成2年5月発行。国会図書館にない。黒神直久は山口県徳山市の市長、徳山商工会議所会頭、神社本庁総長などを歴任。その間、遠石八幡宮の宮司も務めた。いくつものわらじを履いた黒神の生涯をたどり、読み…

木の花社営業ニユース「祭りは真釣り」

『営業ニユース」は木の花社発行、No.5は昭和33年5月発行。おほもと5月号の付録。一枚の紙の表裏に通販の商品がたくさん載ってゐる。全国的茶道ブームで、大本支部でも茶道の習得に励んでゐる。そこで茶箱頒布会を開催し、茶道用具を毎月届けるのだとい…

漁師の弁当の歌をお詠みになった高松宮殿下

『うひまなび 高松宮宣仁親王歌集』は平成12年8月発行、中央公論事業出版制作。函入り。高松宮殿下が青少年時代にお詠みになった和歌100首が収められてゐる。 解説で出版の経緯を記してゐるのは阿川弘之。正字正仮名。阿川の全集には著作目録にも年譜…

西澤才吉「陰陽の真理を具体化したる電化事業」

『陰陽』は陰陽士会編輯部発行、大正14年1月発行号が創刊号。約90ページ。易占者の機関誌で、松岡若翁理事長の日本陰陽士組合と佐藤了翁理事長の東京占業組合が大同団結して陰陽士会が発足した。その経緯や祝辞などが載ってゐる。創刊の名刺広告には新…

メサーブ「神武天皇はアフガニスタンの皇子」

『実話』は実話出版発行、昭和32年10月号が1巻4号。その中に「私は印度人の女占い師です」といふ記事がある。表紙、目次、グラビア、本文で文言が違ふが、ここでは目次から採る。彼女の名前はメサーブ・ベンチ・アブドロヒム。グラビアページにはメサ…

水谷安子「そうだ狢に食べられて死のう」

『夜明けを信じて』は水谷安子著、平成13年9月発行、出版社不明。正誤表付き。まえがき・第一章から第十五章・あとがきの198ページ。巻頭写真は8枚で親族の記念写真が多い。水谷自身は幼少期のものと小さな横顔のみ。 大正2年、満州・奉天生まれの著…

『神様の祀り方拝み方』500万部発行計画

『神様の祀り方拝み方』は肇國神祇聯盟発行、昭和15年12月発行。32ページの小冊子。そのチラシを見てゐる。謄写版で、ところどころ見慣れない漢字の書き方をしてゐる。神棚は神柵になってゐる。普の字は元の字を訂正して横に書いてゐる。元の字は変の…

衛藤雅「霊界生活では勉強に専念できる」

『守護霊の研究 誰にも必ずついている』は衛藤雅(えとう・ただし)著、サンロード発行、平成3年1月発行。 11章にわたり霊界のことを記したあと、付録として「著者自伝『満州そして軍神山での修業』」を載せてゐる。衛藤は明治38年4月、大分県生まれ…

関東大震災から立ち上がった文雅堂の所国松

「成功者立志編 附自力甦生道』は帝国勤倹奨励会発行、昭和8年5月発行。渋沢栄一ら立志伝中の人物22人を取り上げたもの。星一の見出しは「昔は貧乏の古本屋」。大阪朝日新聞の高橋健三や編集部員から300冊を得て、米国留学費にした。 全体にぼんやり…

神様ノ無イ村をめぐって

お正月だから神様が出てくる本がいいな。『故事物語 御国自慢ト負ケジ魂』は著者不明、出版社不明、作成年不明。昭和10年の日付の記事がある。 文章はすべて直筆で、カナ文字ルビ付き。文字の上に訂正の線が引いてあったりする。手描きの素朴な絵は着色さ…

キササゲで儲けた栗原廣三

『自伝対談 薬学の創成者たち』は伊沢凡人編著、研数広文館発行、昭和52年12月発行。伊沢が聞き役となって、21人の薬学者たちに自伝を語ってもらってゐる。それぞれの扉ページに略歴があり、人名事典の項目のやうに詳しく書いてある。 文学者の家族も…

森比呂志の母「一人じゃ御輿は担げない」

『川崎物語 漫画家の明治大正昭和」は森比呂志著、彩流社、昭和59年11月発行。森は明治45年4月、神奈川県生まれ。漫画家だが絵は表紙回りと各章のとびらだけで、文章で自身の生ひ立ちや川崎の情景をつづってゐる。父は石工の監督をしてゐて、暮らし向…

吉澤貞一「整理していないラベルはただのガラクタ」

「手のひらのメディア 吉澤貞一マッチラベルコレクション」は千葉県立中央博物館の展示。会期残り僅か。 「第一章 マッチラベルを集めた人たち」はマッチラベル収集家、吉澤貞一の紹介。千葉・旧成東の出身で慶応の学生時代から収集し、総数70万点といはれ…

興奮して読めなかった『独歩全集』

『白梅』は岩手県立盛岡高等女学校報国団発行。昭和17年3月発行が第31号。年刊のやう。報国団は校友会を発展的に解消したもので、16年5月22日に結成式が行はれた。 直前の5月12日から16日にかけて、精神修養のために六原青年道場での入場体験…

吉田秀雄「正力、前田の爪の垢を煎じて飲め」

『新聞時代』は新聞時代社発行。昭和33年3月発行の第7集は3巻1号。前田久吉が作家の川口松太郎と対談してゐる。題して「新聞の鬼“前田久吉”」。川口の質問に前田が答へる形になってゐる。 東京進出について、次のやうに語る。 東京は政治の中心、大阪…

頭山翁「お鯉は女野郎だ」

『同行』は同行社発行、昭和29年11月号は第4巻第11号。発行編集兼印刷人は齋藤加世。常時執筆者として石橋湛山、西尾末広、大島豊、三木武夫の名がある。 随筆や引用などを載せてゐるが、特色はゴシップ集にある。52ページのうち23から50ページと…

西郷徳男「ピントはずれもいいとこでした」

『語りつぐ昭和広告証言史』は渋谷重光著、宣伝会議発行、昭和53年5月発行。表紙の文字の上部が切れてゐる。書名も凡庸だが、実際は『戦前戦中戦後 広告業界うらおもて』といったところ。広告業界の関係者の証言集で、現代とかけ離れた業界の様子を伝へる…

檜山御陵造営を請け負った大江功造

『大正乙女』は清水光子著、生野重夫発行、昭和61年5月発行。西武百貨店製作。故人の一周忌に際して、身近な人々に限って配布された。時代や人の切り取り方が巧みで舌を巻いた。小説の原稿は段ボールいっぱいにあり、校閲も入ってゐたといふが原文のまま…

梅風「書籍を読むは人の天職にはあらざるべし」

『二 十世紀 新論文』は小宮水心編、立川文明堂発行、大正11年4月発行。手のひらに収まるポケット判。小宮は手紙や文章の書き方に関する本を多く残してゐる。本書はいろんな青年男女の短文を集めたもの。名字はなく下の名前だけ。執筆者の来歴などはよく…

鹽谷不二雄「読書の前には二、三十分の休憩が必要」

読書の秋なのでたまには本でも読まう。でも本を読むと疲れてしまふ…。そんな人には鹽谷不二雄「読書しても疲れぬ法」『健康時代』(健康時代社、昭和11年7月号)。 長時間の読書には目を大切にしなければならない。眼に異常があれば眼科医に眼鏡を選定し…

岩戸町の盲女を助けた正木彦二郎

掘り出した。『橙陰遺稿』は奥付なし、はしがきは大正11年10月。正木彦二郎(号は橙陰)の漢詩、和文、追悼の詩文をまとめたもの。 正木は慶応3年7月、熊本生まれ。元田永孚の下で学び、詩文に長じた。参謀本部出仕。陸軍省で戦史編纂に従事。のち川崎…

若宮卯之助に片寄ってゐるといはれた茂木久平

『東京案内』は黄土社発行、第2巻第2号は昭和30年2月発行。表紙は三浦乃亜。「東京を知りたい知らせたい雑誌」を謳ふ。 この中で「早稲田大学の青春」と題して、尾崎士郎と茂木久平が対談してゐる。尾崎の全集の年譜には記載がなかった。日比谷の陶々亭…

水谷川忠麿が書き残した河童の国の彼等

『角』は奈良「角」の会編集、鹿鳴荘発行。天理時報社印刷。昭和33年7月発行の第3号は32ページ。表紙は棟方志功。奈良ゆかりの人物が1ページづつ随筆を書いてゐる。 松本楢重は春日大社のリンゴの木のこと、蓮實重康は自身の小用譚。前川佐美雄は名前…

北町一郎のユーモア小説「神様の引越」をめぐって

『蚕糸の光』は全国養蚕販売農業協同会連合会発行。昭和30年1月号は第8巻第1号。杉浦幸雄の連載マンガ「おきぬちやん」、山岡荘八の連載小説「戦国佳人」、大原富枝の連載小説「三つの幸福」などが載ってゐる。 面白く読んだのは北町一郎のユーモア小説…

三宅捨吉の牛が怖かった奥平恭昌

『三宅捨吉自叙伝』は奥付なし、息子の三宅嘉十郎による序文の日付は昭和7年10月24日。 三宅捨吉は安政元年、紀州藩士の四男として生まれた。高野山寺院の住職の下で働く。焼失した幡川薬師を復興するなどしたが、上京して漢学の塾を開き、学習院の教師…