2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

水谷川忠麿が書き残した河童の国の彼等

『角』は奈良「角」の会編集、鹿鳴荘発行。天理時報社印刷。昭和33年7月発行の第3号は32ページ。表紙は棟方志功。奈良ゆかりの人物が1ページづつ随筆を書いてゐる。 松本楢重は春日大社のリンゴの木のこと、蓮實重康は自身の小用譚。前川佐美雄は名前…

北町一郎のユーモア小説「神様の引越」をめぐって

『蚕糸の光』は全国養蚕販売農業協同会連合会発行。昭和30年1月号は第8巻第1号。杉浦幸雄の連載マンガ「おきぬちやん」、山岡荘八の連載小説「戦国佳人」、大原富枝の連載小説「三つの幸福」などが載ってゐる。 面白く読んだのは北町一郎のユーモア小説…

三宅捨吉の牛が怖かった奥平恭昌

『三宅捨吉自叙伝』は奥付なし、息子の三宅嘉十郎による序文の日付は昭和7年10月24日。 三宅捨吉は安政元年、紀州藩士の四男として生まれた。高野山寺院の住職の下で働く。焼失した幡川薬師を復興するなどしたが、上京して漢学の塾を開き、学習院の教師…

田邊勉吉が会った弁天町の先生

『長興山随筆』は田邊勉吉著、発行者田邊輝雄、大正15年6月発行。著者は住友銀行や久原鉱業で勤務し、重役も務めた。田健次郎訪問中に発病し、以降亡くなるまで長興山荘で静養した。その間に書いたものなどを櫻井鷗村が編集したのが本書。櫻井曰く 不得要…