ハマグリで折口信夫の小説を釣らうとした石丸梧平

『人生創造』は石丸梧平の個人雑誌。人生創造社発行。昭和13年3月号は通巻169号。「冬の夜の長談義」は石丸の近況の中に、折口信夫との交友の様子が描かれる。 年末、折口に生蛤を一箱送った。めったに手紙を書かない折口だが、珍しく長い礼状が来て驚…

山口二矢を演じた神野猛

『漫画夢の博物誌』は東京三世社発行。第3号は平成2年5月発行。隔月刊。 表紙・巻頭カラーは山田彰博「おぼろ探偵帖」。ろくろ首や泉鏡花が登場する。日野日出志「赤い目のネズミ」はネズミの祟りで右目が破裂するホラー。目次では日野目出志と誤植。 衣…

お餅を毎日食べる大妻コタカ

『人生創造』は人生創造社が発行する、石丸梧平の個人誌。第171号は昭和13年4月発行の臨時増刊。 石丸は困ってゐた。3月号が大槻憲二の「恋愛・性欲の分析処置」により禁止・削除になってしまったから。「全く意外」「これはまゐつた」。 経済的にも…

大阪を破壊し名古屋を壊滅させる長岡外史

『飛行界の回顧』は長岡外史著、航空時代社発行、昭和7年12月発行。8年1月再版。装丁は長女の朝吹磯子。空を飛ぶペガサスが一面に描かれてゐる。 著者の日頃の主張や回顧録、衆議院議員としての行動をまとめたもの。飛行機の重要性から防空思想や都市計…

森秀男「ここまで狂信的になってしまったら処置なしです」

『村の迷信』は森秀男著、全国農協婦人組織協議会発行、昭和34年10月発行。生活改善シリーズの一つ。地味な書名と表紙だが、実は世間にはびこる迷信をバッサバッサと斬ってゆく快著。 お地蔵さんなどを撫でると、その部分の病気が治るといふ伝説があるが…

中屋健一「あたら一生を棒にふるようなことも」

続き。『漫画読売』には他にも「ブンヤ・シリーズ」として、新聞にまつはる文章がまとめられてゐる。「婦人記者奮戦す」は鷲尾千菊の回顧記事。挺身隊になるのを逃れるため、仏教新聞社で宛名印刷や整理として働いてゐた。「仏教界のイザコザやら何やら、一…

火星からのスパイ、火野星平

『別冊 漫画読売』は読売新聞社発行。第4集は昭和31年9月発行。一コマ漫画、四コマ漫画、連続漫画、イラストと文章などさまざま載ってゐる。三島由紀夫の随筆や石原裕次郎の座談会などもある。 「空想小説 ぼくは火星人」の作者は横山隆一。大きな学生帽…

松村たけ「女子が作ったものだけで博覧会を開きたい」

『修身教育 子供演説』は斯波計二著作兼発行、学友館発兌、明治22年12月出版。子供の演説を集めたもの。…の筈だが、名前が日本桃太郎や甘井菓子郎、鞠子倒助(ころすけ)などとおちゃらけてゐる。著者が創作した架空の人物のやうだ。しかし発想は現代人…

本を売って遊ぶ金にした千家紀彦

『背徳の家の子 わが非行体験を告白する』は千家紀彦著、番町書房発行、昭和38年10月発行。ポイントブックスといふ新書シリーズの一冊。カバーデザインは芦立ゆうし。 副題の通り、著者が自らの非行を告白するものだが、主に青少年期まで。刑務所に入る…

大日本政治刷新期成連盟の頭山

『決定版マンガ暴力団対策法 明日への希望』は警察庁暴力団対策法研究会の原作・監修。ぎょうせい発行、平成4年8月発行。登場する団体名・個人名は架空のもの。 同年3月に施行された暴力団対策法を分かりやすく伝へ、市民の被害をなくさうといふもの。推…

有元英夫「おかずがなければ御飯はたべられない」

『俗名さん』は有元英夫著、有元英夫遺稿刊行会発行、昭和35年6月発行。有元は明治20年2月岡山県生まれ、昭和34年6月没。 遺稿刊行会は家の光協会内に置かれた。『家の光』は農業者向けの雑誌で、月刊誌として最大部数を発行したこともある。有元は…

怒ると言葉が丁寧になる大谷光瑞

『上海へ渡った女たち』は西沢教夫、新人物往来社発行、平成8年5月発行。面白かったので文庫などで再刊してほしい。 ユダヤ問題の研究家になる新明きよ子、男装の麗人といはれた川島芳子、大谷光瑞の秘書になった井上武子の3人について、魔都・上海を絡め…

杉田直樹「大学の教授等は疲れない」

『講演時報』第690輯は昭和18年4月下旬号、4月25日発行。時事通信社発行。名古屋帝大医学部教授、医学博士の杉田直樹「民族力と精神衛生」が活字になってゐる。 精神医学と統計と偏見がない交ぜになった内容で、現代の価値観と隔たりが大きい。読むと…

高速度滋養料、どりこの

『どりこの』は8ページほどの冊子。「召上る前に御一覧下さい」の文言や、価格の記載がないことから、どりこのの商品に同梱されたものではないだらうか。昭和15年4月、大日本雄弁会講談社商事部発売。 表紙には何かを飲んでゐる人の像。中身は高速度滋養…

山本徳三郎「神はそんな窮屈なものでない」

『壺中之楽 一名「絶対禁酒」反対論』は山本徳三郎著、岡山の細勤舎書店発行、大正10年5月発行。 著者の序文に書名の由来が書いてある。もともとは「飲酒の心得、酒を清く飲む法」であった。これを見た太田といふ人が、もっと世間の人の目を引くやうにと…

田畑与三郎「天孫降臨は2月4日」

『流れ』は「流れ」社発行、昭和32年11月発行号は第5巻10号。田畑与三郎が「肇国節制定について」を書いてゐる。本文では「(資料)肇国節(国の初を祝ふ日)制定について」。 日本の建国については日向建国説と大和建国説があり、戦前は日向説が教科…

金谷真「建国祭の前に始国祭」

『神武開国』は金谷真著、みそぎ会星座連盟発行、昭和32年1月初版発行。手元のものは43年1月発行。32ページの冊子。 金谷はみそぎの大成者、川面凡児の弟子で伝記も書いてゐる。 「日本の国は建国したのではない開国したのである」といふ論文がこの…

品川区には品川神社

『ぼくらは東京調査隊』は手塚プロダクションの堀内元の作・画。特別区協議会発行、昭和61年8月発行。手塚風のタッチで東京23区の特色や役割について解説する漫画。 主人公のオサムは小学3年生。番長のガンセキにいじめられてゐるところを、金髪で袴を…

泉鏡花が好きすぎて一緒に寝た久保より江

『青年日本』は青年日本社発行。大正3年5月号が2巻5号。いくつか同名の雑誌があるが、これは雑賀博愛編集のもの。 硬い政論記事が並ぶなか、大正博覧会の見聞記事がある。しかし全体に点数が辛い。東洋趣味が欠落してゐて不愉快で、「浅薄なる西洋趣味の…

神道も忍術も学んだ鈴木康哲

『ご縁に生かされて』は鈴木康哲著、高輪出版社、平成8年12月発行。非売品。公的機関の所蔵不明の希書。巻頭のカラー写真ページは自身の結婚式や娘のバレエの様子、社員旅行など個人のアルバムのやう。文章は6割が会社員時代のもの。そのほかの部分に神…

頭山翁への荷物を運んだ富永直樹

『彫琢抄』は富永直樹著、発行者は息子の富永良太、平成19年4月発行。装幀片庭瑞穂。 富永は本名、良雄。大正2年5月、長崎県生まれ。平成184月没。彫刻家として多数の像を作品を制作した。正田英三郎、田中角栄、福田赳夫、佐久間象山、グラバーなど…

辰野隆を心の拠り所にした越田辰次郎

『藝林』は芸林社発行、昭和39年6月発行号は第31号。2月28日に亡くなった仏文学者、辰野隆の追悼号。歯科医の越田辰次郎が辰野の思ひ出をつづってゐる。 初めは辰野家の女中、おさくさんが出っ歯の治療にやってきた。それから夫人や辰野本人も来院し…

前田久吉「どちらが本家か分からなくなるものじゃ」

『新聞裏街道をゆく』は船津重人、新聞展望社発行、平成21年3月発行。定価6000円。『新聞展望』の昭和27年4月から29年12月発行分の中から、記事を抜粋したもの。解説や注釈などはなし。 新聞の拡張や経営に関する業界記事が多いが、興味深いも…

松井翠声「この雑誌は正に反動である」

『旅の装い』は交通道徳協会発行。第2号は昭和33年7月発行。ちょっと変はった名前だが、旅行や交通機関の記事や随筆を載せる。ファッション雑誌ではない。 漫談家の松井翠声が「旅に道徳するのは反動である」を書いてゐる。本文では“反動”表記。松井は発…

鼻が利かない煙山萩子を描いた村山鳥逕

『乾胡蝶』は村山鳥逕著、祐文社、明治40年7月発行。画は橋本邦助。村山は尾崎紅葉門下生らと交友があった小説家、牧師。この本には宗教的な内容はない。書名からはわからないが、収録された8編の小説には必ず夫婦の会話が出てくる。いろいろな夫婦が登…

ひので字で書かれたムッソリーニ

『起て白人種!』は大日本太陽会発行。昭和8年1月発行。内容は、以前新聞に載ったムッソリーニの文章をひので字に翻訳したもの。表紙の書名の下にあるのがひので字。神奈川県の中村壮太郎が創案した。本文16ページのうち、実際の訳文は3~11ページ。…

四大厄難に遭った小山進

『大教正小山進傳 附『歌集』』は足立幸太郎著、昭和14年1月発行。神道大教正、小山進の伝記と歌集。 小山は天保7年、信濃国飯山町生まれ。明治41年10月没。忠太郎ともいった。幕末の志士として東奔西走、平田派国学者らと交はった。生涯に4つの厄…

東京毎朝新聞が認めた喫茶店ゴロナ

漫画やドラマなどに登場する架空の新聞、毎朝新聞。過去にはいくつか実在した。手元のものもその一種。『東京毎朝新聞』は東京都豊島区の同社発行。昭和9年12月9日発行号は第2065号。1部2銭、1カ月50銭。定価から見ても、おそらく表裏2ページ建て…

呪祷改元の葉書を送った久松真一

『後近代体究』は神奈川・平塚の後近代体究所発行。第2輯は昭和56年2月発行。久松抱石資料誌とあるやうに、久松真一(号は抱石)にまつはる資料や関係者の寄稿を載せる。 久松は京大教授も務めた哲学者、仏教学者、思想家。受講者の講義ノートや、久松の…

新聞記者が協力した『東京横浜夜をたのしむ店』

『東京横浜夜をたのしむ店』は立川談志著、有紀書房発行、昭和41年8月発行。42年12月に8版発行。装幀は山形大三。 談志が著者となってゐるが、自信をもってゐるのはキャバレーぐらゐ。そのほかの店については新聞記者に声をかけて情報を集めたとして…