品川区には品川神社

 『ぼくらは東京調査隊』は手塚プロダクションの堀内元の作・画。特別区協議会発行、昭和61年8月発行。手塚風のタッチで東京23区の特色や役割について解説する漫画。

 主人公のオサムは小学3年生。番長のガンセキにいじめられてゐるところを、金髪で袴を履いた少年に助けてもらふ。「弱きを助け強きをくじくのが正しい日本人のあり方デース」。

 少年の名はトキオ。実はオサムのクラスの転校生だった。社会科の授業で東京23区のことを調べ、壁新聞をつくることになったオサム。編集長のガンセキの下、アイドル的なキョーコ、ノッポ、エリカらと協力して学んでゆく。

 お茶の水博士風のをぢさんや伴先生が解説やアドバイスをしてくれる。23区について子供たちがしってゐることを発表する場面があり、「文京区には東京大学がありマスネ」「千代田区には国会議事堂」などと名所の名前が挙がってゆく。品川区は「品川区には社殿の裏に板垣退助のお墓がある品川神社がありマース」と紹介されてゐる。品川区の代表が品川神社とされてゐる。

 先生に壁新聞の下書きを見せに行くオサム。「これはなかなかのできばえだぞ」と褒めてくれる先生。だが、一つ注文をつける。未来の姿を書き足してほしいといふ。

 未来のことを考へながら歩いてゐたオサムは、足元の穴に落っこちてしまひ、気が付いたら別の世界の東京に来てしまった。教室は荒れ果て、弟のヒトシが黒い服をまとってガンセキを投げ飛ばしてゐる。いぢめ問題がひどくなってをかしくなったのだといふ。東京は世界の大金融センターとなり、ビルばかり。神社や区民会館は失はれてしまった。「都心はパンク状態デース」とトキオはお手上げ状態。壁をつき破って出てきたのはゴミ収集用ロボット。キョーコが「コンピューターがパンク気味でときどき暴走するのよ」と教へてくれる。

 オサムが見たのは、進む道を間違へた未来の東京の姿だったのだ。ホラーな描写もあり、SFものとしてもなかなか面白い。