田畑与三郎「天孫降臨は2月4日」

 『流れ』は「流れ」社発行、昭和32年11月発行号は第5巻10号。田畑与三郎が「肇国節制定について」を書いてゐる。本文では「(資料)肇国節(国の初を祝ふ日)制定について」。

 日本の建国については日向建国説と大和建国説があり、戦前は日向説が教科書にも書かれてゐた。それが戦後は大和説が有力になった。2月11日を建国記念日とすることは大和説に立つもの。これは神武天皇が日本を建国したとするものなので、それ以前の歴史が失はれ、日本の国体の美しさ、国民の善さが失はれてしまふ。「由々しき重大事であります」と危惧する。

 国論を二分するやうな建国記念日ではなく、挙国一致超党派的に定めるべきものとして、肇国節制定を提唱する。それは日本の国の始まり、つまり天孫降臨の日である。もちろん神武天皇の時代よりはるかにさかのぼる。

天孫降臨の年月日は太古のこととて明らかでありませんが…万物の始めて生ずるのは春でありますから所謂春立ち初むる立春の気節頃即二月四日頃と推定せられます。

 日本人が初日の出を拝むこと、正月に氏神に参拝することなども、天孫降臨を追憶した伝承なのだと主張する。天孫、つまり日の神を拝んだものだからだ。天孫降臨は厳として歴史上の事実である。

 なほ神武天皇の「撃ちてし止まん」「八紘一宇」といふのは「内外に誤解があり之に関連して国民中にも反対するものがあることは考へなければならない」と、次のやうにいひかへるやうに主張する。神武天皇の東征ではなく東幸・東遷、米英撃滅ではなく米英軍撃滅、八紘一宇ではなく八紘為宇でなければならない。平和主義を反映したものになってゐる。

天孫天照大御神(日の神)から出て日本及日本人の延いて地球上の人々の始祖となられ日本及日本人延いて地球上の人々は日の神(太陽)によって生き長らへて居るのであります…天孫降臨は所謂君民一体、主権在民天皇日本国家の象徴(中心)平和国家、民主々義国家、四海同胞観に基つく世界世界平和な考へ方の大本になるものであります。

 天孫降臨は全地球人類のはじまり。世界平和の大本。それを記念するのは肇国節だと宣言する。