ひので字で書かれたムッソリーニ

  『起て白人種!』は大日本太陽会発行。昭和8年1月発行。内容は、以前新聞に載ったムッソリーニの文章をひので字に翻訳したもの。表紙の書名の下にあるのがひので字。神奈川県の中村壮太郎が創案した。本文16ページのうち、実際の訳文は3~11ページ。この内容を、ひので字の45文字で書き表すことができる。漢字かな交じり文だと、360字の漢字が必要だと、ひので字の長所を力説する。

 本文以外の箇所は、ひので字の長所や例文。かなを基にしてゐるので、1、2時間で覚えられる、読みよく書きやすく美しく、眼の衛生になるなどと謳ってゐる。筆記体も美しいと強調してゐる。

 3,4ページは編者によるはしがき。これは通常の漢字かな交じり文。国字問題を論じ、子孫将来のために思ひを潜め、ローマ字とかなの一長一短を解決するものとしてひので字を作ったことが記される。12~16ページはひので字に対する諸家の批評。石原忍は「推奨することを憚らない」、大島正徳も「日の出の如く、世人に認められることを希望する」と応援する。

 出版者の大日本太陽会といふ名前も、ひので字にちなんで命名したのだらう。1ページには頭山翁の書で「光」が掲げられ、「ひので字の名に因みて」とある。4画目の横棒が長い独特の字。ひので字への感想も聞いてみたかった。