2021-01-01から1年間の記事一覧

丁髷と禊に生きた瀧澤有徳

『隠士 瀧澤有徳』は緒方弦雄著、先哲顕彰会発行、昭和17年7月印刷発行。長野の上田で幕末から大正を過ごした瀧澤有徳について、略伝、追悼文、著作をまとめたもの。 瀧澤は弘化4(1848)年3月生まれ、大正10(1921)年7月12日没。息子の瀧澤七郎は衆…

柳原燁子「仏教は暗い、あきらめばかりが多いのです」

『婦人と修養』は大日本婦人修養会編纂、婦女界社発行。4巻2号は昭和10年2月号。柳原燁子が「悩みを円満解決する神道」を寄せてゐる(目次では「悩みを解決する神道」)。白蓮は日蓮ゆかりの名前だからか、燁子の名義になってゐる。 燁子は今までにキリス…

「雑誌は持ち時間のちょっとしたスキ間に割り込んでくる」

『ページ 目眩めく!』は社団法人・日本雑誌広告協会編集・発行。昭和56年11月印刷・発行。表紙や背にはTHE SUPER MAGAZINE AD. の表記がある。 グラビアページには、各種の雑誌をピラミッド形やひし形などに置いて紹介してゐる。それを眺めてゐると違和…

平田勲を支へた「妙布」の渡辺輝綱

稀書。『苦く懐しきわが青春』山木陋人著、平成3年2月。卒論のやうな簡易製本。56ページ。著者は昭和初期に思想検事と恐れられ、共産党の佐野、鍋山を転向させた平田勲の子息。父や家族の思ひ出話が興味深い。 親父は不思議な人物であり摑み所のない人物…

レーニンの神経痛治療に期待された中村春吉

『愚連隊』は獅子文六著、角川書店、昭和32年1月発行。宮田重雄装幀。ほとんどが著者の身の回りに起こったことを描いた随筆集。全12編。帯に「横浜(ハマ)育ちの作者が…打ち出す会心の珠玉集」とあるが、横浜に関係するのははじめの2編のみ。獅子が移…

留め札を使はない古書店主、岩上作松

『それぞれの機会』は日向康著、中央公論社、昭和39年4月発行。ビニール装で帯文は永井道雄東京工業大学教授。 著者は大正15年生まれ、「思想の科学」同人。目次は2つの項目しかない。「岩上作松の場合」と「亙会嘉吉の意見」。岩上は仙台の古書店主…

危険思想に対抗した大河内翠山

『速記曼荼羅鉛筆供養――大河内翠山と同時代の速記者たち』は竹島茂著、つくば市のSTEP発行。上巻は平成16年7月、下巻は8月発行。下巻に人名索引。 上巻303ページ、下巻309ページ。分量も多いが、執筆にかけた時間も多い。著者は大正14年3月生ま…

中西元治郎「キリスト教は文明の障害」

続き。キリスト教を批判した大内青巒。しかしこれは遠い日本の仏教者が欧米の宗教を論じたもの。『大同新報』には渡米・滞米の経験者によるキリスト教批判も載ってゐる。中西元治郎「異教の国家の体性を傷ふの害恐る可し」(目次では中西元次郎「~害や恐る…

大内青巒の差別論

『大同新報』は大同団編輯局発行。第17号は明治22年11月28日発行。尊皇奉仏を合言葉に、宗教界の団結を訴へる。キリスト教を警戒し、攻撃もする。 「差別平等の理に依て尊皇奉仏の大義を論す」は大内青巒述、荒浪市平速記。 大内は外部からの疑問を…

萬里小路操子だった山岸史枝

衝撃の内容。 『まほろばの御沙汰 萬里小路操子姫の生涯』は小山啓子著、自分流文庫発行、平成27年8月発行。著者は代々続く宮司の家に生まれる。新聞に連載小説を執筆したこともある。 萬里小路操子は「までのこうじ・あやこ」。全3部のうち第1部が彼女…

日本青年協会常務理事・青木常盤

『小説 青木常盤』は関豊作、「常盤」編集室発行、昭和50年6月発行。全158ページ。著者は明治30年6月生まれ。中外商業新報、萬朝報などの社会部で働いた。 青木常盤は会津・猪苗代生まれ。会津中学・福島師範などを経て神奈川農事試験場、鳥取大学…

高畑和夫「集金は読者に快感を与える行為です」

『新聞販売の基本』は高畑和夫著、読売情報開発センター発行、昭和50年12月15日発行。 高畑は昭和6年生まれ。神戸商科大学卒業。マーケティング研究センター所属。大阪読売販売開発訓練委員会専任講師。 370ページで重みがある。表紙回りにびっし…

草莽の大極殿狂人、棚田嘉十郎

『小説 棚田嘉十郎 平城宮跡保存の先覚者』中田善明著、京都書院発行、昭和63年5月発行。 平城宮跡の保存に半生をささげた、棚田嘉十郎を描いたもの。実在の人物や団体の名前、趣意書、新聞記事を登場させる。 棚田は一介の植木職人で、観光客から平城宮…

目次的学問といはれた小原龍海

続き。『漫画』昭和25年7月号には「探訪 御落胤」のほかにも気になる記事があった。目次では「黒幕和尚暗躍す」(進藤朝夫)。ページをめくると、「黒幕和尚暗躍す―小原龍海師のこと―」と、副題がついてゐる。東久邇稔彦の伝記などに出てくる、小原の実像に…

霊媒と運命判断をしてゐた山岸史枝

『漫画』(漫画社)の昭和25年7月盛夏号(第18巻第6号)。表紙を見ると、口ひげの老人の絵と「探訪 御落胤」の告知。堀川辰吉郎の記事があるのかと思って、読んでみる。 24ページから33ページまで、5段組みなので分量もある。文章は高比良記者、絵は…

日共の潜行幹部を追った日本民族研究会

『日本旬報』2号は昭和26年7月25日発行。記者同人出版株式会社発行。本文34ページ。巻頭の5ページが桂洋介「動き出した極右団体 共産党に体当り戦術」の記事。 朝鮮戦争が勃発して、右翼の活動も活発になってきた。その中でも注目の団体を紹介して…

左藤義詮の武勇伝

『精進一路』は左藤義詮、昭和19年7月、伊藤萬株式会社発行。非売品。機関誌の巻頭言をまとめたもの。時局を反映したもの、身近に見聞きしたもの、過去の出来事など40項目。 「小虫の墓」は木曽川の水の事故で亡くなった9歳の娘、道子の思ひ出。蛍を籠…

宜く書物之神学者之遠御祖之尊とも申すべきか

『明烏迷の目醒 神道大意』は発行所、発行年を示すものなし。56ページの冊子。変体仮名が多いので明治半ばごろ発行か。表紙はいざなぎ・いざなみの両神にかささぎらしき鳥。神道の解説書かと思って読んでみると、ちょっと変はってゐる。 和市は母と2人暮ら…