中西元治郎「キリスト教は文明の障害」

  続き。キリスト教を批判した大内青巒。しかしこれは遠い日本の仏教者が欧米の宗教を論じたもの。『大同新報』には渡米・滞米の経験者によるキリスト教批判も載ってゐる。中西元治郎「異教の国家の体性を傷ふの害恐る可し」(目次では中西元次郎「~害や恐る可し)。中西は号、悟玄。野鳥愛好で有名な中西悟堂の養父。中西元治郎はキリスト教のもたらしてきた害悪を論じる。

愚民を欺きて免罪の販売金を貪り野蛮鄙劣なる詐欺破徳の醜態を演出し、ただに劣情発動の具たるに過きさりき

  免罪符の害悪だけではない、宗教革命の混乱も直言する。

至尊の帝王を梟し、無辜の人民を悩殺し、錯雑反乱以て今日に至り、一派より異派を生し、異派より数派を生じ、基督教を弁護するものは、反て其拙を発表するに似たり

  キリスト教は多数に分裂した。キリスト教を弁護するためにその歴史を論じるのは、かへって自身の不都合を発表してゐるやうなものだ。

何ぞ知らん基督教なるものは文明の障害、政治、法律、教育、文学の仇敵なることを、何ぞ知らん朽幹枯根僅かに千百年の培養に由りて、残留する習慣教なるを、

 こんなものが日本に入ったら、日本は暗黒の世となり、白人の陵辱を受け、「神洲陸沈」に至ると警告する。

 そのほか風俗壊乱についての論文は、無署名だが5ページにわたる詳しいもの。

絵草紙屋の店先に畏こくも、 やんごとなき方々の御肖像をならべ掛けたりし、忌まはしき体の画は出版禁止となり、其他飲食切手、骨牌の類、淫褻の書類ともおぼしき題号の書籍に、同じく発行を禁ぜられたるもの少からず見えたり。

  そのやうな出版禁止に対して、反対してゐるのではない。取締りを強化すべしと主張する。

政府の手を籍りて外部より之を制裁するを願ふ位の事に満足せず、其源因を探りて弊患の此に至る所以を究め、内面より之を匡正せん

  政府がひどい出版物等に制裁するのはもちろんのこと、人心を腐敗させる図書があったら早いうちに取り除くやうな活動を民間でするといふ。

 

 ・今日の話、フィクションとリアルを架橋してゐる。ミイラも部誌もみたい。


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