「雑誌は持ち時間のちょっとしたスキ間に割り込んでくる」

『ページ 目眩めく!』は社団法人・日本雑誌広告協会編集・発行。昭和56年11月印刷・発行。表紙や背にはTHE SUPER MAGAZINE AD. の表記がある。
  グラビアページには、各種の雑誌をピラミッド形やひし形などに置いて紹介してゐる。それを眺めてゐると違和感があったが、その理由はすぐに分かった。最初に雑誌の表紙を載せて、次のページに裏表紙を向けて、同じやうに配置して写してゐる。ページをめくると、雑誌の裏表紙の広告がわかるやうになってゐる。日本雑誌広告協会ならではの工夫。

 この書は雑誌と雑誌広告についてまとめた「ユニークな小冊子」(添付の挨拶文より)。ライターの斎藤精一の協力によるといふ。

雑誌広告に関するこの種の刊行物はその例がなく、業界としては画期的な試みであり、貴重な文献としてご活用願えるものといささか自負しております。

 

  雑誌の編集の違ひや読者層が解説され、広告の重要性が強調される。発行部数や流通経路など、図表やアンケートがふんだんに取り入れられてゐる。一方、文章はとても軽やか。

仲間としこたまダベリング。一人の若者が終電でアパートの部屋にたどりついた。ステレオのスイッチ・オン。一日持ち歩いていたカタログ情報誌が、また小声でささやく。「○○デパートで、最新ダウンベスト、ウエストコーストから入荷、そのほか…」。

 ――我が家だけではない、雑誌は銀行、喫茶店、美容院、はたまた病院。それはいたるところで声をかける。私たちの持ち時間のちょっとしたスキ間に割り込んでくる。

 誰でも何かの雑誌を定期購読し、世代ごと、わずかな年齢ごとに読む雑誌が違ふ。雑誌を一日中持ち歩く。広告にも自然に目が行く。…そんな時代を映し出す。

 意味は分かるのに、自分では絶対使はない言ひ回しがをかしい。仲間としこたまダベリング。

 雑誌は情報の核だといふ意見が取り上げられる。

中学生のK君は「ページをめくるたびに、今月はどんな新製品が発売されたかナ? とか、面白い本はないか?なんて、わくわくします」という。K君、学校の教科書でみる社会のありさまより、学年雑誌や、情報誌の広告にみる現実社会の方がよほど興味深いだろう。

 箸休めの読み物も時代を映してゐる。ギャルは雑誌から生まれた言葉といふ説が紹介されてゐる。

 「SF・しょ~と・ストーリー MAGAZINE1991 変身願望」は10ページほどのしょ~とSF。A女はFACEマシン(ファイリング・クリッピング&エディティング・マシン)を駆使して、編集のやうな仕事をしてゐる。地球は局地的な核戦争を経て、第二次ウーマン・レボリューションで平和を取り戻した、といふ世界。この設定は1991年。発行が1981年なので、たった10年後なのに激動の未来を予想してゐる。

 

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