嘉村信太郎「眼鏡は一種のインテリ美を与へて呉れることがあります」

『理容と衛生』は銀座の、美容と衛生社発行。雑誌の名前は理容で、会社の名前は美容。月刊で昭和12年6月号が第10巻第6号。大判20ページ。

 嘉村信太郎医学士が「美容上から見た眼鏡」と題した見開き記事を書いてゐる。

 

眼鏡を掛けるのと掛けないのと、美容上から見てどちらがよいかと申しますと、勿論掛けない方がよいに決まつてゐるのですが、これは眼に欠陥がなく掛ける必要がある場合のこと。掛ける必要がある場合には、掛けないより掛ける方がよいのであります。

 

 視力が悪かったら眼鏡を掛ける。視力が悪くなければ掛ける必要はない。これは当然のこと。美容上はもちろん掛けない方がよい。もちろん、とある。では女性の眼鏡に否定的かといふと違ふ。続きがある。視力が完全でない人が眼鏡をしないと、目つきが悪くなり表情がそこなはれる。少しでも視力に欠陥のある人は、眼鏡をすることが「美容上からも絶対に必要」。

 殊に何等かの職業に従事してゐられる方の場合は、家庭内でボンヤリ坐つてゐられる方とちがつて眼鏡を離すことが出来ないのであります。

 眼鏡は職業婦人に必須のもの。働かない婦人への皮肉が光る。

女性が眼鏡が掛けることへの偏見もあり不自由するだらうが、「さういふ懸念は一切解消してよい」。

むしろ反対に眼鏡は、ともすればぼけ易い、鼻の低い日本婦人の容貌を引き締めて一種のインテリ美を与へて呉れることがあります。 

  嘉村医学士は、少し前には美容上眼鏡をかけない方がもちろんよいと言ってゐたが、あとの方では、日本婦人は眼鏡を掛けることで美しくなるとおっしゃってゐる。

 最後は眼鏡の選び方をレクチャー。これを踏まへたのか、写真の女性は丸眼鏡がよく似合ってゐる。

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