読書療法を紹介した『光の門』

 『光の門』は光明思想普及会の冊子。昭和11年5月発行の非売品。本文48ページ。編輯兼発行者は佐藤勝身。生長の家を宣伝するもので、教団の本や機関誌の抜粋、手紙に加へ、一般紙からも参考になりさうな記事を集めてゐる。表紙にはスタンプで「お読の後は有縁の人へお贈り下さい」とある。
緑色の目次を写す。

生長の家」とは 表紙の2
生長の家七つの光明宣言 一
迷つてゐる時如何にすべきか 谷口雅春 二
「生命の実相」讃 辻村楠造 六
讃仰の声 一〇
失業者が一人もなくなる 一四
漫画 常春の国 市村実 一五
万教帰一の時来る 一六
結核の治つた話 一八
時事特報 一八
統計に現れた生長の家の実践力 二四
近眼は治る 二六
種々の難症の治つた実例(16例) 二八
新しい芸術・教育の話 三九
物語 信ずる事のみ輝く 四〇
最も新しい婦人運動 四六
光明の便り 四八

 辻村楠造は陸軍主計総監。ほぼ毎日谷口宅に参るといひ、数々の奇跡を見聞したといふ。交通事故で子供を轢いたが、『生命の実相』を持ってゐたので傷一つつけなかった人がゐたらしい。これは谷口著の『中心に帰一する道』のはしがきを引用したもの。「中心」のルビは「すめろぎ」。
 「讃仰の声」は諸名士の賛辞。宇山熊太郎陸軍少将は「吾国体に合致せる教」の題で、「軍人として安心して皆さんにもすゝめる事が出来るよ」といふ。これは夕刊大阪新聞から採ってゐる。そのほか、前東北帝大総長の井上仁吉、総持寺貫主の伊藤道海、無我苑の伊藤証信らからの手紙が紹介される。
 市原実の漫画は「常春の国」。光の門の中では虎もライオンも花もニコニコ。ライオンにまたがる子供の服には「KAMI」と書いてある。
 統計の見開き記事では、光明思想で5ヶ月にわたり工場を管理した結果、病者が6分の1に激減、名古屋の稲葉駅では従業員が『生長の家』を読んでから7ヶ月間、無事故を誇ると報告されてゐる。
 「時事特報」は下一段のスペースを利用した記事。「日比谷図書館に於ける読書統計」は教学新聞の引用。宗教書で過去半年間、最も多く読まれたのは『生命の実相』だと示す。
 同じく「新案読書療法」は東京朝日新聞の引用。スペイン・マドリードでラツソ・デ・ラ・ヴエガ氏が提唱した読書療法の紹介。読書による精神療法で、「闘病精神と朗らかな神経とを養ふ」。

患者は入院すると、職業、年齢及び病状に応じて適当な図書目録を渡され、選んだ書物は看護婦が美しい声で読んで呉れる。
 マドリツドの各病院における読書療法の結果は、単に生理学的な点からでも頗る有効だと解つた。

このやうなことは『生長の家』では数年前から実行されて、徹底的効果を挙げつゝある。外国で流行り出したら迷信だと云はないで、生長の家でやつてゐると迷信視するのは変である。

 「看護婦が美しい声で」とあるから生長の家でも女性が読んでくれたのかな。
 
 日本読書療法学会は読書療法が鬱病治療に効果があるとして、現在も活動してゐる。宗教とは関係ない。顧問の一人はリンボー先生。設立は平成23(2011)年で、この冊子は75年先行してゐる。交通事故でも無傷だったり結核も治ったりといふのは別にして、鬱病には効果があったのだらうか。