高橋伸典「さあさあさあという言葉は朝朝朝」

 『日本は世界に叫ぶ 憲法改正必要の意義』は高橋伸典の著。昭和39年8月、郡山市の大和道本部発行の非売品。
 手元のものには旧蔵者による書き込みがある。著者には批判的で、傍線や「ヤレヤレ」「独断」「?」などとある。

 かがみ という言葉の中にある「が」は即ち人間の我を示している。(略)この我をとれば、人間はかみに接近するのである。

 の下には「!! ザブトン一枚」とからかってゐる。
 第三節の国家的進化論では、生物の進化論を神道的な用語で解説。生魂(いくたま)がウイルス、足魂(たるたま)が単細胞生物、魂集魂(たまつまるたま)が単細胞生物が集まった群体、魂統魂(たますめるたま)が多細胞生物だとしてゐる。群体とはサンゴなどのこと。

 日本の今上天皇は、この群体(ハイドロゾアー)の研究で世界的に有名であるが、国体の組織の哲学を、ハイドロゾアーに求めて研究されているということは、何と考えても偶然の研究ではないと不思議に思われるのである。

 「いわば人間の群体生活こそ、社会生活であるといえよう」といふ著者にとって、昭和天皇のハイドロゾア研究には重大な意義があるとみえたやうだ。書き込みには「!!? カイカブリモイイカゲンニシロ」。
 語呂合はせも著者の主張に多く見られる。日本の古称、敷島の国といふのも四季島の意味だといふ。

 また四季島の国という文字を当てるならば、春夏秋冬の国であり、世界のそれぞれの自然の持ち味がすべて日本の国土の上に集約されていることが判る。日本人は、いながらにして、それぞれの世界の気候を体感することができる。

 書き込みは「ああ やれやれ こりゃこりゃ」。
 著者によれば夜朝昼夕といふ言葉にも重大な意義がある。夜は神と人の魂が「寄る」ことであり、拠る・揺る・縒る・選るにも当てられる。朝には次の意味がある。

 日本は仕事を始めるときに、「さあさあ仕事にかかろう」という。このさあさあさあという言葉は、あさあさあさ即ち朝朝朝のことである。一日の始め、この世のはじめが朝なのである。従って夜の世界は、死の世界であり、無意識の世界なのである。

 ちなみに夕は結うで終はり、末法、終末を意味するといふ。
 旧蔵者は著者とは意見がだいぶ違ふやうだが、中には「仲々イイコトイウ」「ココダケ合ッテル」といふ書き込みもある。何より、最後まで通読してゐるのが偉い。