大巴賀参太郎・頓間抜作・螺尾吹太郎の建言

 『大巴賀参太郎・頓間抜作建言写』は全24丁。大巴賀は大ばか、と読むのだらう。この2人が明治3年に建言したものの写し。
 その建言は突拍子もない内容で面白い。まづ神祇官と宣教使を置いたことに触れる。

宣教の御趣意は五倫の道を廃し貪欲無慈悲の趣意を普く布教いたすべきの筈

そこで

博徒の長、あるいは府藩県獄囚の内相応の者を見立て候やう仕るべく候

 世の中は貪欲無慈悲だといふことを教えるため、博徒や囚人を採用すべきだといふ。

 また御一新以来、電信や鉄道ができた。そこで大峯・日光・鞍馬などの天狗どもを召しだす。

通力をもって空中飛行千里の波濤も一瞬間に相通じ如何様の御密事といへど他に漏れ候憂ひなく人力を労せず

 と、天狗を活用する機関を開局すべきだといふ。

 北狄の脅威に対抗するため、神風を起こすことも提案。

器械弾薬人力を費やさず醜夷を圧倒し神州の御国威万国に光輝し外患消滅

 と、神風での解決を唱へる。

 これらのあとにはそれぞれ「御附紙」で当局からの回答が示されてゐる。

 もちろん良い返事はない。これを聞いた大巴賀と頓馬の親友が螺尾吹太郎。「一時救急の策」として提案したのが狐に勅命を下すこと。
 東京では王子や妻恋、大坂では坐摩や玉造稲荷など諸国高名の稲荷から開港場へ赴かせる。

木の葉をもって小判と見せ石地蔵を美人と見せ馬糞を牡丹餅と見せ蚯を温飩と見せ候などかねて得意の妙術

 を活用する。これで国債を皆済する。その上、石地蔵のラシャメン(洋妾)で夷人から金銀を巻き上げる。木の葉なので実際の金銀は流出せず、「莫大の御国益」「富国強兵の御基礎」だと自画自賛する。うーん。