高場乱「よし今日は乳癌について学ぼう」

 高場乱が漫画になってゐるのでみてみた。『まんがグリム童話』(9月号、ぶんか社)の特集は「歴史を血に染めた魔性の女傑たち」。表紙には載ってゐないが、中身を見たらちゃんとあった。「高場乱〜革命を支えた女傑〜」(川崎三枝子)。1頁目の惹句は高場の顔に「男として生きると決意した女のたった一度の恋…!!」「若者よ 真の日本を取り戻せ!!」。なかなかかっこよいです。
 中身は、うん。目つきの鋭い来島恒喜が出てきます。高場と来島の話です。頭山が全く出てこないです。興志塾とはあるが、人参畑塾の通称もなく、牛にも乗ってゐない。視覚的に面白いと思ふのですが。肩肘張って読むものではなく、事実を基にしたフィクションとするべきものでせう。
 それにしても福岡の変で高場に嫌疑がかかった時の、県令の監督責任云々の啖呵も書き換へられてゐて、物足りない。「よし今日は乳癌について学ぼう」と言って、高場が片肌脱がうとしたりする。来島自決ではなぜか東京(江戸と書いてある)に来たことになってゐる。
 それよりも、「ウォール街の魔女」(一川未宇)の方が面白かった。19世紀の超ドケチ女、へティ・グリーンを描いたもの。極端に質素な生活で莫大な資産を残した。子供の頃に何かの雑誌で読んで印象に残ってゐた。クエーカー教の教へで、さういふ生活をしていたといふのは知らなかった。子供向けなので宗教のことは書かなかったのだらう。
 こっくりさんをする山川捨松の描き方はちょっと良かった。エカテリーナの話は合はなかった。