へその緒祀った彝倫道協会

 『建国の由来と彝倫道協会の概要』は奥付がないが、文章中に皇紀2600年1月の日付があるので、昭和15年頃の発行。26ページの冊子。

 彝倫道協会宣言によれば明治45年設立し教義を定め、奉斎、祭祀、慰霊、祈祷、蔵祀の事業を行ひ殿堂を建立。以来30年に及ぶ。

 彝倫道協会綱領は12条に亘って事業を列記し、全てに御製を添へてゐる。例へば第一条信仰。

信仰 本協会ハ 明治天皇ヲ信仰ス

御製 罪あらは我れを咎めよ天つ神民は我か身の生みし子なれは

御製の部分は赤字。

以下、天照大御神神武天皇明治天皇、歴代天皇を奉斎し、西郷隆盛元田永孚渋沢栄一を祭祀し、と続く。その中に、蔵祀といふ見慣れない単語がある。

蔵祀 本協会ハ 皇統弥栄ノ神慮ヲ体シ臍帯ヲ蔵祀ス

御製 なほさりに思ひしことも年をへておもひかへせはこひしかりけり

 臍帯とはへその緒のこと。へその緒を収蔵して祀ってゐたやうだ。皇族のものか会員のものか詳しくは分からない。

 役員一覧も載ってゐて、会長は横山三郎、補導として頭山満。顧問は16人で一条実孝(また!)、井上哲次郎などと続く。中野正剛や真崎甚三郎、近衛文麿もゐる。彼らのへその緒も蔵祀したのだらうか。