赤尾敏「ボクは、新聞推薦選挙だと言ってるんだ」

 『Emmaエンマ』は文藝春秋の隔週刊雑誌。写真が主だが、丸谷才一の連載など文章もある。昭和61年7月23日号は2巻14号。116ページで、ほかの写真週刊誌より厚みがある。参議院選挙に出た泡沫候補たちが載ってゐる。

 表紙では「赤尾敏らホーマツ候補21人のホントの顔」。目次では「言うだけ言って戦いすんだホーマツ候補21人のアブナイ正論」。愛国党・赤尾敏、UFO党・森脇十九男、日本世直し党・重松九州男、MPD・下元たか子、救国党・福田拓泉、老人福祉党・有田正憲、雑民党・東郷健日本民主党・品川司、世界連邦・南俊夫の9人の名がある。

 本文にはほかにも協和党・今野宗禅、みどりの連合・太田竜、全婦会・福田撫子、浄霊会・小林三也、教育党・城戸嘉世子、社会主義労働者党・町田まさる、福祉党・天坂辰雄、誠流社・柴田吉一、日本みどりの党甲賀喜夫、教正連・石川佐智子、無所属・石川ハチロー、自由共和党・沢田正五郎が紹介されてゐる。

 見開きで扱ひが大きいのは赤尾敏で、腕を組んで正座をしてこちらを見てゐる。このとき87歳。赤尾によれば、泡沫候補といふのは朝日新聞が赤尾を落選させるために初めて使った言葉だといふ。東京には50人が立候補してゐるが、新聞が勝手に人数を絞り込んで載せる。「だからボクは、新聞推薦選挙だと言ってるんだ」。「尊敬する人? いるわけないだろう」。

 太田竜は「万類共尊 生類供養」と書かれた法被を着てゐる。町田まさるは、1日4時間労働制を主張してゐる。現在の生活水準なら2時間でいいといふ。柴田吉一は隊服で腕組み、背後の幟には「ソ連の蛮行…」と読める。超過激派右翼の総隊長。沢田正五郎は「えっ公約? そんなものありゃあしませんよ…」。甲賀喜夫の趣味は麻雀。「新聞記者(サンケイ)をやっていて覚えた」。

 老人福祉党は泡沫の連合体。有田正憲の座右の銘は「政治家はホラ吹きでなければならない」。花輪春造は元浪曲師で性病撲滅を標榜。清水王道は数霊手話を世界共通語にと訴へる。党名はあまり関係ない。すごい人ばかりで楽しい。

 下にある広告に目が留まった。高輪のホテルパシフィックのもので、キャッチコピーは「読みたい本がたまっています。」

プールサイドで読むか。ベッドで読むか。昼下りのバーで読むか。それとも、小説のストーリーを地で行きましょうか。楽しみな夏を大切にしたいと思います。

 ホテルに泊まっての読書を勧めてゐる。あさがおコース、ひまわりコースがある。プールサイドは眩しさうだし、バーでは酔って集中できなささうだが、利用者はゐたのだらうか。  

 

f:id:josaiya:20211103200625j:plain

f:id:josaiya:20211103200656j:plain