英米の反道徳的行為を数へ上げた井上哲次郎

 『修養世界』修養世界社発行、昭和17年10月号は第31巻第9号。通巻360号。井上哲次郎が「大東亜戦争と道徳」を書いてゐる。

 昨年の開戦以来、皇軍は連戦連勝で戦果を挙げてゐる。これは、日本には神ながらの道があるからだ。英米にはさういふ道や道徳心がなく、ただただ功利的に行動してゐる。「甚だ野卑、陋劣」。

 そして英米の反道徳的行為を、10個数へて指弾してゐる。それぞれ掻い摘んで引くと、1、植民地の住民を前線に出して、自分たちは後方に控へてゐる。2、日本の病院船を襲撃した。3、戦地で略奪や暴行をする。4、禁止されてゐるダムダム弾を使用した。5、すぐ逃げる。6、現地民に要塞を造らせた後、秘密保持のために皆殺しにした。7、原住民を教育しなかった。8、細菌戦を行った。9、要塞内に怪しい女を連れ込んでゐた。10、兵士が高給で、すぐ捕虜になる。

 英・米の兵は迚も我が日本の兵と戦つて勝利を得るなんといふことは思ひも寄らぬことである。(略)英・米の兵は道徳上から見て、種々の欠点を有して居るがために、海に陸に空に惨敗を嘗め尽くして居る。

英米は道徳上の欠点があるから負けるのだといふ。この文章は昭和17年10月号のもの。戦局が反転したあとは何を思ったのだらうか。井上は昭和19年12月没。