高橋信義「愛国心を持っているなら青旗のもとへ帰ってこい」

 『写真集 國士』は昭和59年12月20日発行。企画制作小森征夫、編集新野哲也。政経公論社発行。定価参萬円とある。皇室とか政治経済、同和関係の分厚い本はよく法人などに売りつけるためにつくられ、内容も寄せ集めで価値もあまりない。この本は定価は高いが、右翼人士の写真集として資料的な価値がある。公的機関の所蔵は確認できず。(第一集)とあるが、続刊があったかどうか。
 登場するのは赤尾敏、浅沼美知雄、荒原朴水…と五十音順で山口申まで23人。それぞれ長い挨拶文がつくが抽象的な話題が多く、写真から分かることの方が多い。赤尾は児玉や山口二矢との写真。浅沼が演説する横で山口が腕章をつけて旗手を務めてゐる写真もある。山口は荒原とも写ってゐる。志賀敏行・牢人乃会代表世話人保田與重郎らと記念写真に収まってゐる。
 高橋信義(義人党総裁・日の丸青年隊総裁)は日本跆拳道(てこんどう)協会会長でもあり、選手団を率いてエクアドルを行進してゐる。「唯一愛国思想をもって結成された全民労」、全国民声合同労働組合の最高顧問でもある。写真では壇上の垂れ幕に「働く者の生活の安定と向上」「労使協調は和の精神で」「全民労は働く者のよろず相談所」「人間尊重と互助の心」と書かれてゐる。高橋は

 われわれは、全民労という愛国的な労働組合をつくっている。左翼の労働組合赤旗なのに対し、われわれの組合旗は青旗である。労働組合は、左翼の専売特許ではない。愛国心という総和の中で、青旗の組合があってよいと思っている。むしろ、私は赤旗を振っている組合員に、愛国心を持っているなら青旗のもとへ帰ってこいと訴えたい。給料を上げろという彼らの主張もわからないではないし、一時的に共産主義にかぶれても、愛国心にめざめれば、彼らはかならず転向しうるのだ。

 と呼びかける。白黒写真なので黒くてわからないが、青い旗なのだらう。参加者側が写ってゐないので人数が分からないが、壇上には司会2人も含めて11人確認できるので、極端に少ないといふこともなささう。
 西山廣喜(財団法人日本政治文化研究所理事長・やまと新聞社社主)はベン・アミー・シロ二ー、カンボジアのソンサン議長、韓国の丁一権首相、福田赳夫首相らと写ってゐて、交友が広い。福田進防共挺身隊隊長の項には行進の様子が多数あり、「共産主義反対」などの幟を多数掲げてゐる。女子隊員もゐて、20人は確認できる。ひざ下スカートで、ブーツのやうなものを履いてゐる。
 巻末の政治討論会には、阿形稔大日本国民協議会議長、大石恭輔日本民族青年同盟会長(全愛会議)、岡樹延大行社行動総隊長、近藤勢一青年思想研究会事務局長、信岡幸典青年思想研究会副議長、松本効三日本青年旭心団中央本部長、吉田哲雄全日本愛国社団体会議情宣局長が参加。松本は

 人の前でしゃべるということは、それ自体が自己鍛錬である。人の話をよく聞き、書物をよく読んで自己改革をすすめたうえでなければ、とても人前で演説などできない。また、自らの主張をしゃべることは、それを行動に移そうという意欲を刺激する。
 たとえば、浅沼稲次郎を倒した山口二矢は、毎日、赤尾先生の街頭演説を聞いて意識を高め、街宣活動に参加してみずからを鍛え上げたと聞いている。

 と発言。山口が学習や成長をして行動に移した面があるといふ。