『皇道日報』の戦中のものは題字下に毎月1、5、11、21、25日の発行とある。月5回だ。購読料は前金で1年12円。「皇道を宣揚して國體を明徴し、現時の思想戦を担当す」と謳ふ。4ページ建てのときは1面が全面福田素顕の論文。文末に素剣とあり、これが当時の筆名らしい。2面はほかの人の文章や連載、3面は中央や地方の動向、4面は書籍広告など。2ページ建てで紙一枚だけのときもある。
昭和19年2月12日付の1面論文は「皇戦『いくさ』の意義」。上部の日付と題字下の発行日はいつも異なる。
福田は戦争の意義について、日本神話に即して論じる。現在の天地は暗気(くらけ)なす不安定な状態。天之瓊矛の発動により世界の罪穢曲事を禊ぎ祓ふのだといふ。一般国民はこれを戦争といってゐるが、それは正しくない。いくさ、といふべきだ。
我が国の行ふ戦争は、戦争には非らずして、本質的なる文化運動と謂ふべし。
世界人類を言向和し、以て、永久平和を確立するにあり。
「いくさ」とは「生草(いくさ)」の義にして、民草を真に生かし給ふ神業也。まことに 天照らす神軍の向ふ所、億兆の民草悉く安生し、各、其処を得て大和の国となる。これを、大東亜共栄圏に徴せよ。
老子、孫子、クラウゼビッツ、ルーデンドルフが戦争理念について記してゐるが、それらと日本の「いくさ」は全く違ふ。いくさにより、世界万国もれなく大和の国に新生するのだと説く。
この紙面では皇道宣揚・國體明徴の部分が表はれてゐるが、ほかの号では思想戦の部分が前面に出てゐる。それは当時のいはゆる国家主義者らを激しく攻撃するものだった。続く。