福田素剣「殲滅戦を断行すべし」

 続き。福田素剣の行った思想戦とはどういったものか。米英や猶太を攻撃するだけではなく、その影響を受けたと福田が思ふ人物たちを槍玉に挙げた。『皇道日報』昭和19年1月18日付1面より。

今我が日本に現在する猶太思想謀略の選士たるは誰れぞ。大川周明石原莞爾里見岸雄、山川智應等是れ也。之等の周囲に集ふ徒輩又然り。 

  福田らが里見の不敬思想を排撃すると、彼らと中野正剛は官憲に弾圧を要請したといふ。「是れ、彼等が猶太陣営の闘志たるを暴露せるもの」。福田の文には「猶太の五列たるや疑ふも愚かなれ」「國體を破壊せんとするや謂ふ迄も無し」「鏡にかけて見るが如し」などと、「思想謀略」を確信してゐる。五列は第五列でスパイのこと。福田には情報提供者がゐたやうで、「思想謀略を探偵する某氏」からの津久井龍雄らの動静も伝へてゐる。

之等に対して思想戦を行ふが我が日本思想戦なりとす。吾が日本思想陣営より幾度か渠等に対して順逆を説きしも、猶ほ猶太陣に踏みとゞまる。依りて之等に対して殲滅戦を断行すべし。 

  かれらに説得を試みたが態度を変へないので、殲滅戦を断行すると強調する。福田は神道、石原らは日蓮主義者だが、福田は猶太思想を理由にしてゐる。福田の攻撃は他にも向けられた。続く。

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