正富汪洋「断じて負けてはならない」

 『歌集 やまとたましひ』は岡山出身の詩人・歌人、正富汪洋の著書。昭和19年3月、詩と歌謡の社刊。質素な装丁で著者名は表紙になし、背と奥付のみ。書名は表紙・背・扉がやまとたましひ、奥付のみ、やまとだましひ。
 昭和18年7月付の自序を読むと正富の心持が知られる。皇道による世界国建設を主張し、米国への敵愾心を露はにする。

 米国人は戦勝後は、日本の軍人、政治家、新聞記者等を殺害し、残る総ての男子を強制的に奴隷とし、日本の国土を去らしめ、若き女子はこれを留めて、日本を彼等の享楽地にすると云つてゐるさうだ。これは米国人の性情を最も明白に暴露してゐるものと思ふ。(略)言語に絶する惨忍性を恣にする米人との戦には、何十年何百年戦争が続かうとも勝たねばならない。断じて負けてはならない。

 ガダルカナルの戦闘で、米兵が鬼畜の所業をなしたといふ話を聞き、歌に詠んでゐる。さういふ酷い目に遭はせないためにも、絶対に負けられないのだといふ。 

にくしにくしわが死傷兵の頭割りふぐり斬るてふアメリカ兵は 

喰むものにはた著るものに事削げばいよいよふとる大和魂

かゝる時皇国の為に何もせであらば子まごの恥ぢて泣くらむ