桜沢如一「ウナギの国、日本」

 神保町にできた鰻丼屋さん500円で、月に一度はもっと安くなるとかどういふことなの。
 マクロビの創始者桜沢如一の著書に『うなぎの無双原理―新しい立身出世の秘訣』がある。昭和16年10月初版で、手元のものは昭和47年7月の第2版。発行所は日本CI、世界正食協会。発売所はオーサワ・ジャパン、ムソー食品。印刷ではどちらも発行所になってゐて、二重線で訂正して「売」のスタンプが押されてゐる。
 ウナギの生態については入江幹蔵『鰻』などを参考にしたとある。
 著者は、ウナギが長い旅をして困難や抵抗に遭ひながらも川を上ることに感銘し、個人の立身出世や日本の興隆にたとへてゐる。

 ウナギ上り! 鯉のぼり!
 ウナギの木のぼり、鯉の滝のぼり! 
 わがウナギの国、日本は不信と敵意と悪意の逆流、激流をのぼりにのぼって世界観の最高峰に達しなくてはならないのです。

 「日本民族は数千年来、ウナギのごとくウナギ上りに成功し、ウナギのごとく静かに、長く発展してきたのではないでしょうか」ともあり、日本はウナギの国であることを論じてゐる。
 ただしこれは天然ウナギの話。養殖ウナギはインチキで味もまずい、食べた人は病気になる、養殖業者もたくさん破産してゐると罵詈雑言を浴びせてゐる。おいしくするには滝を利用するなど、養殖の仕方を工夫しなければならないといふ。
 
 
 はつ夏にうなぎを食めば思ほゆる
  身を養ひて捧げたる大人