大成会の有松英義会長と会員の顔ぶれ

 『大成会会報』は大正15年2月11日に第1号が発行された。執筆者に千家鉄麿、沢田五郎、井箆節三、三井甲之らもゐる。月刊で、編輯兼発行人も沢田。大成会は「普通選挙は、億兆心を一にして、天壌無窮の皇運を扶翼し奉り、益々国体の精華を発揚せんことを期するものである」に始まる普通選挙五大精神を徹底するために作られた。普通選挙の実施こそ、五箇条の御誓文大日本帝国憲法教育勅語の趣旨の完成に他ならないといふ。普選を階級闘争の手段にしてはならないともいふ。
 有松英義会長の「大成会の趣旨に就て」は、神職に向けて語った講演。「選挙其ものは是亦我国体に探ねて遠く神代に淵源を致して居ることは今更喋々を要しない所である」、ところが現状は選挙違反や醜聞が多い。「諸君の説かるゝ所の神の道は誠であります。天下の選挙民果して神の道たる誠の心があつたならば、斯の如き行為を以て国家の為めに大切なる選挙権を行ふに際し恬然として恥ぢざることは恐らくはないことであらうと思ふのであります」。大逆事件を捜査した有松だが普選に反対するのではなく、神道の立脚する誠の道によって普選を神聖化すべきだといふ。
 選挙が神聖なものであることは、金光教の長谷川雄次郎幹事の「神聖さを貫徹せよ」に如実に表れてゐる。曰く

 参政権は、神業翼賛権である。
 授けられる神業翼賛権を、純真に享け奉れ。
 恵まれたる神業翼賛権を、純真に忠誠に施行せよ。

 我が徒は、
 普選を大成せんが為に、 
 君民一心のまつりごとに仕へ奉るの道を大成せんが為に、
 天祖の神業を翼賛し奉るの道を大成せんが為に、普通選挙の五大精神を、広く万天下のわがはらからに提唱して已まないものである。

 大成会は前年7月に発会式を行った。発企は有松、上杉慎吉、佐藤範雄、神崎一作、加藤房蔵、小川郷太郎ら。来賓は平沼騏一郎、松本重敏、紀平正美。指導会員として江木千之、植木直一郎、五弓安二郎、西川光二郎、沢田総重、井上孚麿、渥美勝の出席があった。神道本局や渥美勝の交友範囲と重なる。建国会と似てゐるが赤尾や津久井の名はなし。 
 役員は会報第1号発刊時点で会長代理が内田嘉吉、幹事長が上杉慎吉。雑誌委員に芳賀矢一、河野省三ら10人。有松は既に病身で、のちに内田が会長になる。活発に活動したのは上杉で、巡回講演や夏期大学などに尽力してゐる。