神道天行居東京支部発会式で講演した星野輝興

 『石城島』は神道天行居東京支部の機関誌。しきしま、と訓む。昭和3年11月発行の創刊号は惟神同志会の名義で、のちに支部発行となった。編輯兼発行人は森田良雄。
 4年4月3日の東京支部発会式とその後の例会で星野輝興が講演を行ひ、4年6月発行の通巻第8号に記録されてゐる。講演筆記なので読みやすいが内容は興味深いものがある。
 星野は若い頃は「神道と云ふものを日本主義国教論と云ふやうに非常に論理的に考へて居つた」、しかし神職となって宮地巌夫に出会って、信仰や神仙について理解を深めるやうになった。
 祭祀学や神について論じる中で、天皇の性格についても触れる。

 天皇はある場合には神であり、ある場合には人であらせられます。然るに天皇を単なる人と観るのが、所謂赤い側の者で、単なる神と思ふのが所謂右傾団の人達であります。かゝる思想が強く出て居りますので、却つて天皇の御本質が窺へぬのであります。

天皇陛下は吾々から申し上げますれば神であらせられますが、天皇陛下御自身は神に対されては、神ではあらせられません。一日本民族の代表者で、神々に対する主祭者であらせられ、場合によりては参拝者として御立ちになるのであります。

 天皇を神様としてだけ認識するのは右に偏った人たちの見方で正しくない。天皇陛下が神様に対するときは、人としての立場で臨まれる。各地の神社の祭祀を見てもそれが裏付けられる。靖国神社でも同じで、亡くなった軍人のほうが神として祀られてゐる。
 他の号では今泉定介も講演してゐて、やはり現状の国体論、祭祀論への不満を表明してゐる。
 東京支部発会と前後して、巻末に昭和3年4月の宣言が毎号掲げられるやうになった。団体の主張が端的に表れてゐる。

キリスト教日本国に入りて僅かに三百六十九年
○それ以前の吾等の祖先は総てキリスト教と交渉無し
○仏教日本国に入りて僅かに千三百七十六年
○それ以前の吾等の祖先は総て仏教と交渉無し
○天国も極楽も地獄も総て関する処無し
○それより以前の天皇、皇族、聖賢、英雄、名将忠臣義士、孝子、美人すべてキリスト教と仏教とに交渉あること無し
○吾等は須らく祖先の信仰に帰り眼界を大にして 
 神武天皇に帰らざる可らず
 天照大御神に帰らざる可らず
○是れ昭和日本国民全員の大自覚足らざる可らず
○この祖先の信仰に帰る道を指さすもの是れ実に我が天行居なり
○天行居の這の大使命遂行の為めに神代以来準備されたる聖地こそ実に我が石城山なり