『モンペール』は定価10銭、本文42頁のパンフレット。教材社、昭和12年5月発行。表紙の「葉隠精神の一考察」は大木陽堂の執筆。
ほかにも修養や仏教の記事が掲載され雑誌のやう。しかし目次も巻号も明記がない。「モンペール」はフランス語で「お父さん」だが、タイトルに採用した由来はよくわからず。
木谷新鸞といふ人が書いてゐるのが「ジヤン拳と日本精神」。じゃんけんは国体に合致した、尊い遊戯だと主張する。
ジヤン拳は実に国体精神を現はす日本遊戯の尤なるものであります。ジヤン拳は三種の神器を象徴して日本の国体精神と民族性を伝ふる懐こい遊びであるのです。風呂敷は鏡、石は瓊、鋏は剣を象徴したもので三つが別れると争もあるが三つが寄れば合子となつて競ひが生じる。何と美はしい日本国体と民族性の遊戯ではありませんか。天皇は日本国民の合親で日本国民は総て天皇さまの合ひ子であります。
日本の遊びはカルタなど技能の修練や手慰みが目的で、勝負する碁や将棋、賭け事は外国から流入してきた。日本の遊びは気添ひ、外国発祥の遊びは競ひであると解説する。「二大政党論なども実は闘争民族の発明であつて調和と公平を期する所以のものでない。日本と日本の国体には適しないものなのです」。
今の世の中はまた有といふ石と無といふ不平屋の鋏とが争つて居ます。そこにはまた第三として何ものかを持出さねばなりません。
それには日本国体精神を持出せばよいのです。
有産階級も無産階級も、アイコで気添へば気添ふほど活力が漲る。そこに対立はなく、和合の精神で高め合ふことができるといふ。
最近でも欧米では、じゃんけんが日本独自のものとして認識されてゐる。
こじ付けのやうでゐて、不思議な魅力のあるじゃんけん論。