時対協の西武商品不買運動

 『時対協十年史』は、大日本愛国団体連合時局対策協議会の、昭和35年から45年までの記録をまとめたもの。目次は「昭和○○年度・会議並運動概要」の文字のみがずっと続くもので、少々味気ない。しかし本文を読んでいくと戦後の世相がよく出てゐる。
 マスコミで皇族方が取り上げられたり、映画で皇室に関することが出て、不敬だと見ると抗議を行ってゐる。
 昭和39年、『日本読書新聞』が皇族の肉体上の問題を捏造するといふ人権侵害事件を起こした。この際は「悪逆不逞の行為」「鬼畜に類する所行」と抗議し、即時廃刊などを要求した。福田進防共挺身隊隊長らの訪問には巌浩が応対し、抗議文と謝罪文を掲載し、同紙100部を送った。
 今度はこの巌の対応に対し埴谷雄高吉本隆明らは抗議・勧告を行ってゐる。

 昭和45年には、「皇室を利用する悪徳資本家、堤清二(西武百貨店社長)」への糾弾、商品不買運動を行ってゐる。
 天皇陛下の妹の島津貴子さんが「西武ピサ」といふ高級服装店で売り子として勤務することに抗議したもの。浅沼美智雄防共新聞主幹らが三好基之副社長、本江隆治総務部長に面接して、勤務の辞退をするやう促した。
 10月30日付の抗議文に曰く、 

営利のために皇室を利用し、皇室の尊厳を傷つけて顧みない大不敬、大逆行為であり、我々を含めて多数国民の容認しがたいところ、憤激ここに極まるというも過言ではない。

 抗議の葉書百数十通も郵送し、西武商品の不買運動も行った。


 西武側が「申し入れの趣旨は十分これを尊重して、今後も皇室の尊厳を傷つけないよう留意すると同時に、貴子さまの日常に警護にも万全を期します」と約束、和やかに懇談し円満解決したのは翌年4月12日。
 
 楯の会事件が起こったのはこの間のことだった。制服の話も出たことであらう。