坂本龍馬の純愛とウヒヂニ、スヒヂニの神

 『神風純愛教略解 全』(神風会出版部発行、明治43年8月発行、編輯人酒井恒矢)読む。宮井鐘次郎の神風会のものだが、本書中に宮井の名前はなし。自序は酒井尋牛名義。
 小冊子だが100ページ超なのでなかなか詳しい。神風純愛教の教義について平易に説いてゐる。前半で天照大神と同じくらゐ前面にでてくるのがウヒヂニスヒヂニの神。
 この教えの神様は「絶対無限の霊性」で、その顕れや働きとしての神がウヒヂニスヒヂニの神である。この二柱の神の妙体が純愛となる。「純愛といふのは肉情の少しも混入して居らぬものを指して終始一貫厚薄のないものであります。、世間で愛といへば憎むに対する反語でありますけれども、純愛は憎悪といふ観念を予想しない即ち絶対の愛であります」。
 続いてウヒヂニスヒヂニの働きの例として挙げられてゐるのが、昭憲様が日露戦争時に坂本龍馬の夢を見たといふ話題。今でも一般に流布されてゐる顛末を述べたのち、
 

 是れ即ちウヒヂニスヒヂニの妙体の働きで、坂本の君を思ふ純愛の心と 皇后陛下の国民を愛し玉ふ有り難き大御心との純愛の力が相ひ感応したのであります。

 このあと、副島種臣が娘が病死する予知夢を見たと続いて、 

斯ふ云ふ例は世間に至つて沢山有るのであります、それを世人は奇蹟とか不思議とかと申しまするけれども、不思議でも奇蹟でもありませぬ、皆なウヒヂニスヒヂニの妙体の働き即ち純愛の力であります。

 敬愛とか親子愛とか、さういふののうち不思議なものを示して純愛と云ってゐる。それで坂本龍馬も純愛だといふことになってゐる。