閑院宮家に玄米料理を奉仕した石野彦行・芳子夫妻

 今年から始まった、建国記念の日におむすびを食べようといふ試み。普通の誕生日はみんなケーキでお祝ひするけれども、日本の誕生日だから日本らしくおむすびを食べようといふ趣旨。案内では2・11の11を蝋燭に見立ててゐる。これはやはりケーキを連想させる。誕生日にケーキなどの御馳走を食べるのに、この催しのおむすびは海苔もない白米に具も梅干の質素なもの。今時いろんなおむすびがある中で、これで誕生日を祝ふ気分になるだらうか。
 奉祝気分を盛り上げるためには、具を豪華にしたり地方の風習と結び付けたりとか、何か仕掛けでもほしくなる。米に注目するなら誰の・どこの・どんな米なのかといふ謂れも大事。
 『神ながらの食 附感謝と体験報告』は大日本興国会発行。昭和11年6月発行で13年4月に6版。大日本興国会は「玄米興国白米亡国」を掲げ、玄米食を指導する団体。天照大御神が「五穀の中でも黒米(玄米)が此国に住む者の食物としては最も適して居る」と認めたとし、神ながらの食と称へてゐる。理事長は石野彦行。名誉会長はいつもの一条実孝で「玄米興国」「神ながらの食」を揮毫してゐる。
 同書には玄米食を実践する人の感謝の文章が幾つも掲載されてゐる。そこには「腰痛全快」「胃潰瘍快方」「高血圧、早老、便秘症全快」「皮膚がしつとりとなる」「脳と両眼全治」などありとあらゆる病や不調が改善されたと報告されてゐる。田中光顕、和田亀治の次に坂本一海軍中将。家族と共に犬も玄米にしたところ、犬も流産しなくなったといふ。「閣下は日本古来の此玄米食に依つて外来悪思想を排せよと絶叫されて居ります」。
 手元のものには縦長の紙片が挟まってゐる。その
写真にある三徳釜とは同会推奨の釜。玄米の効果は一般のものと同じだが、こちらの方がおいしく経済的にいろんなものが調理できる。裏面には石野夫妻が閑院宮家に奉仕した様子が記されてゐる。閑院宮殿下は既に三徳釜のことはご存じで、事務官はその場で調理してみよといふ。

直に玄米小豆御飯、ふろふきお大根、八ツ頭のぼたん煮、鯛の塩むし、釜揚うどん等三徳釜に依る本会独自の栄養料理を調理して献上申上げました所実に美味であると御賞めの御言葉が下りました。

 一時期は妻の石野芳子理事が毎日御殿で調理を奉仕した。その後、宮家では白米を廃止し玄米か半搗き米を採用することになった。