小島晟功「完全に絞め殺して御見せ致します」

 同志社出身なので、少しは大河ドラマの余沢があってもおかしくない気もしなくもない品川義介。『何でも腹だ』(大隣社、昭和13年)には、頭山翁邸に集った奇人たちが出てくる。
 80歳近くで極寒の隅田川を泳いだといふ阪本謹吾の次に紹介されてゐるのが小島晟功(こじまのりたか)。

 そして此の若僧が、有名な小島晟功だよ。こいつは唐手術の名人で、たつた指二本さへあればどんな強い奴でも、忽ちひねり殺す術を知ってゐる。ハ……先日も浅草の劇場で、あのやわらかそうに見える、ほつぺたへ、針金を通して其れに太いロツプをくゝつて、五人乗りの自動車をひつぱり廻して、素晴しい人気をとつた者で、恐ろしい男だハ……」
と紹介された。

 小島自身は、「病弱だったが頭山翁から心の力といふ偉大な教えをもらって、福岡に帰った。そこで1年山に籠って行者になり、力を得た」といふ意味のことを言ってゐる。「僅か一、二分間で、完全に絞め殺して御見せ致します」と豪語する。
 行者なのか唐手家なのか見世物屋なのかわからないが、そこも含めて恐ろしい。

 其の外にきやり節連中10人、曲芸をする火消し、吟詠屋、本物の気狂ひ(只泣いたりけらけら笑つたりする)が連日やってきたといふ。

 また、床の間の軸の作者については、翁自ら「之は正岡子規等の先生で、新派の元祖にあたる昭覧といふ烈士の筆だよ。/此の男は、其の国の殿様である越前侯から招かれても、行かなかつた人物で、とうとう殿様の方から、夫婦がお揃いて駕を枉げて、教へを乞ふた事がある位の偉材だ」と説明してゐる。橘曙覧評価の、早い例ではないかと思ふ。


 マイナビ転職を覗いたら、図書館コンシェルジュが載ってゐてへえと思ふ。