泣くほど笑ふ蓑田胸喜

『みくに』昭和14年1月号(5巻1号)を読んでゐたら、蓑田胸喜を見つけた。

岩越兄の御紹介で蓑田胸喜氏に面会を乞ふと、御多忙中だのに、みくに医院まで飛んで来て下さる。御病気は、などと気にかけてきい[て]下さる御様子は、初対面の方とはどうしても思はれない。あの激しい御文章とは似もつかぬあたゝかさだしかし学問の深さ、博さ、気力の強さ、さすがにと感じながら、時局についての御感想を承つた。私が時々合の手に何か云ふと、氏は笑つて笑つて、しまひには涙をふきふき笑ふ。氏がこんなに笑ふのを初めて見たと岩越兄は言ふ。

 今泉の署名があるので、今泉源吉と蓑田の会見記。岩越の方が先に蓑田を知ってゐたやうだ。
 その岩越元一郎、編集後記を書いてゐる。

「みくに」も非常に貧乏だこんなことは言はなくても読者はわかつて下さるだらう。然し、「みくに」を清貧にさせてゐてはならない。うんとみくにに浄財を出して、天下に働きかけ度い我々を助けることは重大なことであると思ふ。だまつて十万円程出してくれるなら、エライ事をやつてみせる自信がある。誰かありませんか。(岩越)

 
 誰かありませんか。