頭山翁を指圧する浪越徳治郎

『自分でできる3分間指圧』(浪越徳治郎実業之日本社、昭和42年)はハウツー本だけれども、たまに自伝めいた話柄もでてくる。

 戦前に頭山満という豪傑がいました。この方は一代の国士といわれ、日本全国に大勢のファンがいたものです。頭山さんのからだつきはとてもガッシリしているのですが、お腹だけはワタのようにフワフワと柔らかいのです。

「私は、この頭山先生に可愛がられ、よく指圧治療にうかがったものですが、治療するたびに、すばらしい肉体だわい、と感心させられたものでした」とも称賛してゐる。他に褒めてゐるのは吉田茂久原房之助

 「笑おう会」のことも出てゐる。はじまりは終戦直後の銀座一丁目で、金川文楽といふ人がゐた。とぼとぼ歩いてゐる人の肩を叩いて「上を向きなさい、上を……空は高いよー。アッハッハ……」と一日中笑いながら歩いてゐた。これを見た浅沼稲次郎社会党書記長が共鳴し、銀座四丁目の日本堂時計店の佐川久一が店の二階を提供して結成した。
 毎月の例会では笑いの話題を持ち寄って大笑いして散会する。会員3000人。
 政界では重宗雄三、西尾末広安井謙、辻寛一、山田久就ら、芸能界では早川雪洲徳川夢声宝井馬琴、内海突破、田宮二郎、上田吉二郎、その他予言者の藤田小女姫、美容家の山野千枝子ら。浪越は総裁ならぬ笑裁。
 会の様子が何度もテレビで取り上げられたといふ。