下位春吉の友人「銀座は日本か」

北海別院に於ける下位春吉氏の挨拶


 私は信仰上の事は抜きにしまして此度の神聖運動が如何にして起きたか又起すに至つたかに就て話して見たいと思ひます。満洲事変が起こつて以来日本及世界は精神上に物質上に種々穏やかでなくなつて来て居ますがあの事変の起こつた当時私はまだあちらに居りましたが同郷の人であり私の親代りである頭山先生が、お前も何時迄も外国でうろついて居ないで日本へ帰って来て此際お国の為に働いて見ては如何かと云はれましたので一昨年の五月日本へ帰ってきた様な次第です。而し頭山先生と同様に何の肩書も名もない一兵卒として祖国の為に働こうと決心した様な訳であります。
 日本へ帰つて参りまして国内の様子を見ました時に如何にも斯うにも手の付け様のない状態である事を知りました。然しこれは日本に愛国運動が足りない為ではない。東京に在る愛国運動だけでも四百余の団体がある。外国では愛国団体と云へば二つか三つ位のものである。
 昨年横浜の別院に於て出口王仁三郎師と面会した時「あんたの来るのを待つて居た、あんたにやつて貰ふ仕事もこの通りプログラムに出来てゐる」と師からその経綸策をも見せて頂いた。
 私の平素思つて居る意思とも一致した「日本は世界で一番偉い国だ、日本が世界を指導しなければ今の世界は救はれない。先づ国民の心を入れ替へて結束をさせる必要がある」とこんな訳で私は早速この運動に乗り出す様になつたのであります。
 何より彼により必要なのは国民の大同団結です。絶対無限の御皇室を中心に大同団結さへ出来るなら農村問題も何も彼も解決が付くのです。
 国民の大同団結を破るものは外でもない、日本国の使命を知らず盲目的な西洋崇拝の大馬鹿者の居る処であります。猶太人の小手先に使はれてその足許に額づいて居る馬鹿者の多いことです。日本の都東京の銀座を見ると全く驚いて仕舞ふ。或るカフエーは英語しか使はぬ、私の友人が「銀座は日本か」と云ふ事を書いて居るが本当にそう云ひたくなる。
 日本人が而も何一つ西洋人に劣つてゐない日本人が何を好んでこの様に西洋かぶれをする必要がありますか、愛国運動と云つても、皆主義綱領は五十歩百歩の処です。偉そうな事をどう並べるかその並べ方が少し違ふ位なものです。若し違ふところがあるならそれは実行力です。何の準備もなしに軍隊の様に特別な訓練も受けないで而も千差万別の境遇にある人達があの様に立派な訓練をやつてのけるあの力が外の団体と違ふ処なのであります。どうか吾々の運動の底力のある根強いところは日常の起居の中にも一致結束して国家の為に尽す処にある事を知つて頂き度いと存ずる次第であります。

『真如の光』(昭和10年6月3日発行・第11年第21号・総第371号、天声社発行)の囲み記事より。下位と皇道大本のことはなぜかウィキペディアに書いてないが、この文章は経緯と志がよくわかる。愛国運動のくだりの分析がよい。「大同団結」「一致結束」はファシズムを念頭に置いてゐるのだらうか。

 『真如の光』は3・10・17・25日の毎月四日発行と週刊誌並みのハイペース。約20頁の薄冊で、昭和神聖運動の活動報告や人事などがぎっしり。下位が出口副統監に従って、北海道各地を回った事が分かる。肩書は下位参謀長。副統監は宇智麿のこと。