加藤喜孝「来らなくともよい、黙契を交しておかう」

 寒いから暖かくなりたい。

『二陣三陣』は二陣三陣社発行の国体政治宣伝パンフレット。「二陣三陣」といふのは日蓮の遺文から採られた。第2号「吾人の観たる現代政治と我等の運動」は昭和2年4月29日発行。

 表紙裏の「二陣三陣の使命」を見ると発行者の性格がよくわかる。「政権掌握に向つて、不惜身命の信念をもつて驀進する」「吾人ならざる一切のものに、同化的戦闘を宣言し」「血を啜つて起てる若党」。政権掌握のため、熱狂的な活動を行ひ、要求する。

 宗教的な内容はなく、激越な煽動や政治への不信が盛り込まれてゐる。巻頭言の次は加藤喜孝「民意政治を葬れ」。「内容」と異なってゐるので切り取りか落丁かと心配したが、掲載順が違ふだけで全部載ってゐる。

 加藤は民意を尊重する立憲政治に代はる、国体政治の確立を主張する。

多数は正也とするのが政治でなくて、多数を正しくするのが政治である。過去は問ふまい。今や正しき本当の政治が生れなくてはならぬ時だ。もう虎の門では銃砲が鳴つてしまつたのだ。 

 

今の日本に要するものはドギツイ刺戟である。頭のテツペンから足の爪先まで、ビリビリツとくる様な、猛烈な刺激である。現代はそれを求めてゐるのだ。左傾と云ひ、右傾と云ひ、今の思想的動きは、要するにこの刺戟を求むる心が、大なり小なり手伝つてゐるのである。

 

 

 満天下の青年諸君! 諸君はこの日本を、吾等の、日本を、吾等の祖先の日本を、吾等の 天皇陛下の日本を、この儘見殺しにしようとするのか。この儘見殺しにしようとするのか!

 吾等と志を同じくする人よ来れ。……来らなくともよい、黙契を交しておかう。今の日本を救ふべき者は吾等青年の外にない。悪い世の中と十分腐れ縁の出来てしまつた既成政治家などに何を云つても駄目だ。時は今だ。 

  銃砲だとか見殺しだとか、刺激的な語句が躍る。同志よ来たれと呼びかけるととともに、来たらなくてもよい、黙契を交はさうといふ所など、ほとばしる情熱と力強い確信ぶりを示してゐる。

 佐藤三郎「今の所謂政治とわれらの政治」は、世界と人類を見つめる。

 即ち国体政治が興らねば、日本はどうにもならないのです。そして日本にこの日本の本当の、正しい立派な政治が興らない以上、永久に世界と人類は闇です。

 永遠に平和は来ないのです。 

 

人類を救済する政治、これ程偉大な、これ程尊厳な、そしてこれ以上美るはしい政治はありません。我等は之を行ふのです。そしてすべての人が之を讃せねばならないのです。それが即ちまさに我等の興さんとする国体主義の政治なのです。

 

  佐村笛童「厳かに我はうたはむ」は61首の和歌の連作。頭にカッコ付きの番号が振られてゐる。感傷と激情が入り混じった佳い歌がある。

 

(40)真心をこめて語ればそゞろにも人より早き我涙かな

(45)一つ良き歌の出来たり心地よし今宵はすべての歌を焼くべし 

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・この前の神田さんの番組、全く将門に触れず、この路線でいくのかと思ひながらみた。