雲雀が好きな藤澤清造

 

雲雀は、僕の好きな鳥の一種である。僕は、空高く飛びながら、玉をころがすやうなリズムで以て囀つてゐる雲雀の声を耳にすると、沈みがちの僕のこころも、高く上へあがつて来るからである。これは、秋の夜更けに鳴く梟の声を耳にすると、どう心驕つてゐる時でも、ひとりでに、地の底深く沈んで行くのと同じである。

『現代仏教』昭和五年五月号「郊外風景」より。藤澤が好きなもの嫌いなものを語る随筆。紅梅は大嫌いで白梅が好き。若木より老木ほど風情がある。麦畑を見るのも好き。見る時間も「僕の経験上、一等好いのは、朝のうちである。朝も夜の明けがたが一等である」「あらゆる植物中でも、此の竹が一といつて、二とはさがらない位好きなのである」なかでも金明竹が一等である。