本が好き過ぎ鍛冶忠一

 『とりもの随筆 お天気博士言行録』は日本出版販売の鍛冶忠一の著、学風書院、昭和30年8月。高橋ゆり装丁。
 表紙、奥付などはサンズイの治、本人の「おひとよしの言葉」(序にかえて)はニスイの冶。
 本にまつはる随筆集。著者は本の取次業なので本が売れてほしいといふ気持ちは分かるが、度を越してゐる。
「夢物語」「続・夢物語」「続々・夢物語」は10年後の出版界の夢の話。妻も夫も子供も政治家もみな日記をつける「日記時代」がやってくる。

あらゆる階層の人、あらゆる年齢層の人が書物や雑誌を持ちあるくことが国家的時代モードとなつた。(略)
助産婦が赤ン坊をとりあげて、鞄から計器をとり出し赤ン坊の体重を計ると同時に男女の識別に応じて、男児の場合は「のりもの」や「動物のエホン」をお祝として贈る。女児の場合はきれいな花や、人形のエホンをお祝する。何と微笑ましい人間の出発ではないか。(略)
 その他、吉凶のすべて、入学、卒業、就職、お見舞、結婚、銅婚、銀婚、金婚の式、賀の祝、喜の祝等々、あらゆる幸不幸、お祝にはまず相手方の書物をえらび贈りあう。

 人は生まれた瞬間から本を贈られ、就職や結婚、喜寿の祝いなどに至るまで、人生を本と共に歩む。
 花嫁道具の第一は書物で、何千万円分の書物を持参したといふことが話題になる。国民すべての教養が高まって、犯罪が皆無になる。ただ書物や雑誌のスリなどは行はれる。
 電車に乗るときも本を貸してくれるサービスがある。東京で乗るときに本を借りて切符に印を押し、大阪で降りるときに返す。雑誌は車内にある。

駅では切符を切るときにまずたずねる。あなたはどの部門の書物がお好みですか。(略)車内にズラリとサンデー毎日週刊朝日週刊読売、週刊サンケイ、などと一汽車に五十冊もおいてあるので自由によむことができる。

「書を蔵して」では、蔵書のある旅館、小規模図書館の導入を想像する。

曰く哲学の間、文学の間、小説の間、文庫の間、美術の間、そうして部門別の書物など揃えてあつたら、いかにも文化の香り高いではないだろうか。

全国津々浦々に、村ある所、町ある所、ささやかにてもよろしい、少年少女児童専門の図書館を心ある篤志家のお骨折と村費か町費の援助のもとに是非実施の運動を開始したい。

 ・公式ガイド、店主(店主以外も含む)の血液型。性格診断を信じてる、疑問に思はない人向け。星座も載せればいいのに。産額は算額三菱東京UFJ銀行