東亜相互企業の慰安旅行に参加した田辺茂一

 『銀座ネオン街これだけ暴けば殺される』(粋川太郎、昭和60年6月、政界往来社)の表紙には「各界名士実名入り」「銀座夜の無頼帳控え」といふ文字も躍る。
 1章「銀座を代表する�女狐�ママ列伝」から8章「匿名座談会 銀座夜のスキャンダル全公開」まで、政治家芸能人作家らの有名人が実名で暴露されてゐる。巻末には銀座クラブ・マダム名簿一覧があり、住所や電話番号がたくさん載ってゐる。
 現役の関係者もゐるので引用にも困るものが多い。
 7章は「シルクロード」系列の栄光と挫折。�銀座の帝王�町井久之が東亜相互ビル内にオープンしたクラブ「シルクロード」の内実が詳細に描かれる。有名俳優のいとこでスカウトマンの梅宮尚、営業部長の天野憲治、オープン屋の杉山一之など有象無象が登場する。高級クラブハウス「TSK・CCCターミナル」は東亜相互企業セレブリティーズ・チョイス・クラブの略。運営委員には岡本太郎や桶谷繁雄、紀伊国屋田辺茂一檀一雄山岡荘八渡辺恒雄ら。オープンレセプションには小佐野賢治永田雅一、川島正次郎、石原慎太郎山東昭子長嶋茂雄林房雄らが出席してゐる。
 経営が立ち行かなくなったあと、「シルクロード」系列のマネジャー、ホステスがどこに移籍したかといふ一覧もある。「藻」から「綾小路」に移った江藤房江ママは怪女で、一度は都知事選に立候補宣言した。「現在、わたしには三万人くらいのシンパがついているの。ええ、もちろん日本を支えている上層階級の方ばっかりよ」と嘯くが撤回。録音テープに録られてゐても発言を否定した。
 東亜相互企業の慰安旅行には田辺や梶原一騎ら180人が参加。バス18台、18時間かけて阿波踊りに行った。田辺が「徳島までのバスの中では、隣りに座ったホステスの×××を十数時間も×××××××、さすがにみんな怒りましたよ」(伏字は引用者)とあってドン引き。匿名座談会でも金払いが悪くやたらに威張る、とさんざんにいはれてゐる。