早川雪洲のお隣は迫水久常

 ゲンダイ9面の「本屋はワンダーランドだ!」にBOOKS鎮守の杜。4段費やしてしっかり書いてある。冒頭の「代々木公園の北東脇に立地」が引っかかるくらゐ。隣の記事の『東北の伝承切り紙』(平凡社)もよい。東北の神社に伝はる、七夕飾りのやうな紙細工の作品集。
 日経に早川雪洲の探求記。西郷隆盛の号の南洲の向ふを張って北洲ならぬ雪洲を名乗った。さういふ心根が伝へられるやうになるともっとよい。『房総及房総人』昭和29年6月号に迫水久常元内閣書記官長の講演記事。その中に早川についての発言。

 過日大将の七周年祭の時早川雪洲君嘗て楠正成、日蓮上人、山下大将等を映画化したる経験により是非鈴木大将終戦の劇的一齣なりとも映画に残して置き度希望を述べられたのでありまするがそのスクリーンの中に迫水氏が活躍し、大将未亡人が白髪を黒く染め直し令息一氏や令甥武氏等が若造りして現れ下村海南翁が命がけの詔勅録音の場面なども出来るものであります。

この映画は実際に作られた「日本敗れず」か。早川本人の発言としては

私が今までやりましたうちの、いかなる映画にも優つた、、極く材料の豊富であつて、そうして我々の人生観、国際関係というものを本当にわからしめて、日本の精神というものを、日本国民の本当の国民性というものを、皆さんの前に明らかに披歴して、いわゆる世界人類の平和のための大きな糧になるようなものと私は信じまして、この間発言をしたのですが、幸いに迫水さんとはニューヨークで三十年前に私の隣に住んでおりまして、私の家へも来ていただいて御飯を食べたということもあるということ、こういう因縁でありますからして、いろいろなことを聞くと、御飯の食べ方はどうだとか、寝言をいうとか、くしやみの仕方まで教えて下さると思います。

 発言をそのまま速記してゐるので読みにくいけれども、雪洲と迫水が親しかったことがわかる。