福島安正中将、春機発動す。

 ストロスカーン氏の事件が新聞を賑わせてゐる。陰謀論もあって予断を許さないが、この手の話はどこの国にもいつの時代にも発生してきた。
 

当時の参謀副長に福島安正というのがあった。シベリヤ単騎遠征で世界に名を知られた人である。この人が大の女好きで、一日参謀本部に出席する途中、犬のつがっておるのを見た。すると春機発動して取って返した。ところが細君が不在であったので、留守の女中を押えつけた。そうして何食わぬ顔で参謀本部に行っていると、時の軍医少将中村緑弥(後の軍医総監)というのが訪ねてきて、「次長閣下、うちの女中にあなた手をつけちゃいけませんよ、大へんなけがさせておるじゃありませんか」と言った。「僕は何もしないよ。」「冗談言いなさるな、実は細君から電話がかかってきて、女中が急に苦しみ出したと言うので、私が馳せつけてみた。納戸に連れていって事情を聞くと、旦那様が途中から帰ってきて犯された。それで旦那様が出かけてから便所に行くと、腸が出てきておる。これは死ぬんじゃないかといって嘆き苦しんでおる。よく内診して見ると、ルーデサックが残っておった。それが半分外に出ておる。女中がそれを腸と間違えた。それをよく取り除いてやって、心配するな、奥さんにそんなこと言うたらいかぬとよく注意して、あなたの所に来たわけだ、奥さんもあるのに、女中に、陸軍中将ともある者が、むやみに手をつけちゃいけません」こう言った。すると福島中将は、君、世の中に女中をしないやつがあるのかと反問した君らは女中をせぬかと言ったので、さすがの中村少将もあきれて、これはどうにもならぬといって帰ったという話だ。(『政界の秘話』牧山耕蔵・蜷川新共著、昭和35年12月15日発行、国際観光興業株式会社 綱紀粛正会本部共同発行)

  何これ。本当だとしたらひどい話だ。刊行時からでも何十年も前の話なので、関係者の中傷も考えにくい。しかしこの冊子、12万部発行とある。巻末の謹告に、「社会悪を追求し、世の中を少しでも明るく」するために刊行したとあるのだが、受け取った人は何を思っただらうか。手元のものにも表紙に赤い贈呈印が押されてゐる。

 山口二矢の父、晋平の話題も面白いがまた他日。