伊藤繁太「日本人の胸の内には悪魔の霊が宿つて居る」

 『国体基礎画解』は伊藤繁太編、小樽市のイサミヤ発行、昭和9年12月発行、昭和10年3月2版。

 子供でも分かるやうに、絵を用いて日本の神話を語り、国体を明らかにしようとした書。…この通りなら珍しくもないが、「はしかき」にはただならぬ言葉も含まれる。

 

 我等日本人の胸の内には、「天地神の霊にあらざる、悪魔の霊が宿つて居る」のでなからうか。

 この冊子は国体を論じる中で、悪魔との闘ひを呼びかけるもの。編者の自己紹介に、悪魔の正体が明かされる。編者の伊藤は考古学者の話を聞いて、文字に書かれてゐないことでも様々なことが分かることを学んだ。それを「天津罪、国津罪」解釈に導入した。

この論法から見れば、「天津罪、国津罪」に酒と云ふ文字なくも、罪の性質から見て、酒の為めに発生した罪と断定して、何の不可があると思つたのであります。 

大祓詞によれば、 天津罪とは田の畔を壊したり家畜の皮を剥いだり、糞をまき散らすこと。国津罪とは家族や家畜を犯したりすること。畜類にも劣る行為で、これらは「衆果酒(もろこのみのさけ)を飲んで判断力を失ったからだといふ。

 

我等の神聖なる祈りの祭壇にまで、悪魔はノサバリ上り、我等を惑はしめてゐる。(略)この恐るべき勢力――酒を、私は今様大蛇(おろち)と言つてゐます。

 

 編者は酒の害を非難し、愛国者は禁酒のために運動をせよと呼びかける。禁酒運動は外国の模倣ではない。木花咲耶姫は酔はない酒として甘酒を発明された。酒を飲むやうになったのは、支那文学などの軟文学が原因である。宗派神道にも批判の矢を向ける。

或教派は、御馳走政略として祭壇に酒肴を供へ、直会と称する宴会(さかもり)に狂態を演じ、得々として居る。如斯教派の播布された地方の道徳は却て低下して居る。 

  明治維新は、酒杯を手にしない勝海舟の指導で成就した。ハワイは酒飲みの軟骨漢が金と色で篭絡されて親米党を組織し、ついにアメリカに併合された。

日本歴史を見よ。そこには酒を排除すれば国難解消する実例を多く見ることができる。(略)時の執権北条時宗は、禁酒令を発し、酒壺三万余個を壊して、大廟に天祐を祈つた。至誠天に通じ、救国の神風起り、敵全滅した。弥栄、弥栄! 

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