『聖勅奉行読本』は大正15年12月、聖勅奉行会発行。同会は久我常通会長、三井信理事長。
陸軍少将・男爵の黒田善治が篆刻した、教育勅語の掛け軸を頒布するために組織された。黒田は尼港事件に出兵した際、病を得て、左半身不随となり帰国。難波大助の虎ノ門事件を契機に思想戦に臨むことにした。はじめ教育勅語を100枚書写し、更に続けようとしたところ、過労となり周囲から止められた。そこで篆刻に切り替へた。書は筆者の性格が表れるが、篆文は人格を超越したものなので、聖句にふさはしいのだといふ。「…命を損することあらんも悔ゆる所なし、寧ろ本願なり」。
篆刻は研究を重ね、図案にも工夫を凝らしたもの。写真と字解が載ってゐる。「博愛衆に及ぼし」の字句は、赤十字の形。中心の「徳器を成就し」はハートの形になってゐる。「義勇奉公」は楯の形。
この本はそれらの解説。日本神話についても、祖先の理想信仰が表されてゐるとして、特に天岩戸の前の真賢木を取り上げ、取り付けられた勾玉、鏡、和幣を重視する。
識る神は対照を得て、初めて御光を輝かし給ふ事を、神は唯空漠に存在するにあらずして、万我万物なる対照を得、こゝに弥栄の神霊を発露し給ふなり
神はかたちを得て真価を発揮するといふ解釈で、この掛け軸もその考へが反映されてゐるとみられる。
東郷平八郎元帥の言葉として、
各家庭に於いても、少くとも、毎週一回は、御勅語を奉読して、常に念頭に置かしめ、実践躬行するやう、心懸けて貰ひたい。
とあり、実践を奨励してゐる。
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