井箆節三の紹介で一燈園に行く

 続き。宮地嘉六の小説「放浪者富蔵」を読んで放浪に憧れる。郵船ビルで肉体労働をするも一日で音を上げる。四十年後、同じビルにジャーナリストとして通ふやうになる。三共商会という日傭任人夫供給業者から派遣されて目黒のエビスビール工場で働く。壜の上に麦藁帽子をかぶせる仕事。割れたら急いですすった。これも一日でやめた。
 中村一郎と徳冨蘆花邸を訪ねる。女中が出てきて用向きを書けと言ふので、愛読者なので教えを受けたいと伝えると、多忙が理由で会はないといふ。犬に喰はれて死んでしまへと思ふ。『黒い目と茶色の目』にちなんで、門前に黄金の山を築く。
 中村の紹介で井箆節三の食客となる。井箆は名古屋の市民大学の指導者、もとジャパンアドバタイザー記者。名古屋市長・名古屋新聞論説部長の塚本三の実弟。岐阜の神官の息子。代表作は春秋社の『日本主義論』。市民大学では秋田雨雀や伊藤証信の講演を聞く。葉山嘉樹とハンカチを売って革命ロシアを助ける。
 井箆の紹介で一燈園に行くが、天香師は園には週一しか来ず、普段は木屋町の金持ちの離れに居る。息子は人妻に手を出す。修養者は時計を盗んだり金がなくなったりするなどで偽善ぶりが許せず批判したら追い出された。園は京都御所の草取りには行くが貧民窟は助けない云々。
 山川均から著書や蔵書を借りるほど親しくなり、守田有秋二六新報編集長に紹介される。
 ここまでで第二章終。ハンカチ売りってそんなに実入りがよいのかしら。