茨城の天狗洞文庫からの手紙

 続き。同書には「献本受難」の項もある。
 淡路が本を出版した際、茨城の天狗洞文庫といふところから手紙が来て、無料で寄贈してほしいといふ。見ず知らずの他人なので放ってをいても一向にあきらめず、何度も手紙を寄越す。

これ程懇望してゐるのだから、一部位施して呉れてもよいではないかとか、寒村の一貧書生に同情しようともしないのかとか、こんなに頻繁に出す書面に一度の挨拶も寄越さないのは無礼千万ではないかとか、いろいろな御託を並べるのである。

 かはいさうになって送ってやると、献呈署名がないと文句をいってきたりと、ちょっとをかしい人だ。
 淡路は飛行機の専門家でもあるらしく、一家に一台普及した未来予想、空の上での尿意の問題とか、眼の付け所が秀逸だ。