九州で国旗尊重を絶叫した藤崎善吉

 使命社の『使命』は京都の村田太平が発行した小冊子。昭和5年8月号は第91号。目次に「聖戦陣頭の勇士」とあるのは、九州で国旗尊重の運動を展開した藤崎善吉を紹介したもの。寺井利一執筆。

 藤崎は福岡県筑紫郡安徳村の同志。藤崎が配布した宣伝文も引用されてゐる。

国旗を出すべき日に当り、まだ掲揚されてゐない家もあり、又掲げても甚だしく汚損(破れたりよごれたり)してゐたり、玉や竿の無いのや、揃つてゐないのを見ます。これは誠に遺憾な事で御座いますから、どうぞ心から尊重して掲揚して頂き度いのであります。 

  祝祭日などに国旗を掲げない家、掲げても国旗を尊重してゐないやうな家を注意してゆく。規格も正しい正式国旗の宣伝に努めてゐる。

 直接交渉の様子も伝へられてゐる。

軒にでも立てかけた儘、打ちやつてある様なのを見ると、それが役場であらうが、学校であらうが、何の遠慮もなく、その不心得を話し、若し聞入れないと、二日でも、三日でも、その村に滞在して、徹底的に、これを糾弾(よしあしを正す)するといふ熱烈さである。

又国旗の濫用等に就ても、見付次第に、えらい剣幕でどなりつけるといふ始末で、時にはそれが為に或校長と端なくも論争をやつたといふ様な事もある。  

 国旗をむやみやたらと掲げたり、掲載したりすることもいけない。自転車に乗って全九州宣伝旅行も始めた。寺で寝泊まりしたり、農業を手伝って旅費を稼いだりと、一年も活動してゐる。現在は故郷に帰って農業をしてゐるといふ手紙を使命社に寄越してきた。禁酒断行、半搗米常用も実行し、いよいよ健康だと力を漲らせてゐる。