出口王仁三郎「著述が一番の労働」

  『昭和』(昭和青年会発行)の昭和8年8月号に、安達謙蔵が「スポーツ亡国論」を書いてゐる。安達は前内務大臣・衆議院議員

一般学校では、運動とか衛生とかゝら考へて、スポーツはいゝものだと思つて居るらしいが、実は飛んでもない誤りである。

 マラソンなどは血液が体の下のほうに行って、貧血してしまふ。回復には二か月以上の養生が必要になる。内務省で調べたことだから信じてよい。

 

所謂スポーツ・マンと云ふ連中は、世間の人にヤンヤとはやされる事を以て、使命として居る人物であるらしい。

 毎日寿命を縮め、国家の役にも立たない。体が丈夫だから戦争に役立つといふ人もゐるが、最近の事変などでは全部だめだった。軍部の調査によるものだから信用できる…と、スポーツマンをけなす言葉が並ぶ。体を動かすなら日本古来のもののほうがいいといふ。

 「出口王仁三郎氏に物を訊く座談会」といふ記事もある。座談会といふか、記者との一問一答形式だ。

 経済問題を語る中で語る、出口の労働観が面白い。

筆を採つて働くもの、新聞やとか、雑誌を出すもの、或は本を著述する者が、一番の労働や。

 出版界隈の仕事に敬意を払ひ、その苦労を思ひやる。肉体労働は時間が決まってゐて、風呂に入れば疲れもとれる。しかし著述はさうはいかない。「一晩位寝たかて頭が癒らへん」。総理大臣の激務にも同情する。「新聞読む間も無い程忙しいんだから頭がグンニヤリなる」。

 労働時間についても一家言ある。

八時間労働やとか、六時間労働やとか云うて居るけれど、そんなに働く人は少い。八時間、時間を潰しても、働きやせん。八時間の中、二時間以上休息して居る

 8時間労働といっても、そのうち2時間は休憩時間。日本人全員が協力して働けば、毎日1時間で仕事はなくなってしまふ、とまでいふ。「心身の疲れ忘れて国の為め世のためわれは朝夕いそしむ」と謳ってゐるが、実際は心のほうはどうだったらうか。

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