質の普及を目指した『聖典新聞』

 

 名古屋の木津無庵らが編纂した『新訳仏教聖典』。日本仏教の経典を平易に和訳したもので、どの宗派でも通用するやうにされた。

 『聖典新聞』は大正15年12月1日創刊。以後毎月発行された。名古屋の仏教協会発行。創刊の辞に、趣旨が述べられてゐる。『新訳仏教聖典』公刊以来、1年半で2万部近い部数が発行された。

 そこには実に、怖ろしいほどに漲つて居る国民、否人類全体の霊の渇きを認めるのみである。

 爾し、この量の普及に比例して、質の普及が果して並行して進むであろうか。我々の苦慮する点は、実は寧ろこゝにある。(略)筆の力を藉りて内容の宣伝に努めることが出来れば、それこそ実に充全の策が尽されたことになる。

『新訳仏教聖典』の魅力を伝へるため、紙面には読書会の案内、寄贈状況、巡教の様子、講話などが載ってゐる。

 昭和2年9月10日の第10号には、KM生「出版界の傾向と聖典の頒布法に就て」がある。KM生は今年の春以来、「いわゆる壹圓本」が登場して、仏教聖典も値段が高いのではないかといふ声が出てきたのだといふ。これを機に、大量出版と廉価販売の方法を探るべきではないかと提起してゐる。

 

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