財津香雪「高天原ハ地面ヲ離ルヽ上空凡ソ二十里ノ所」

 『通俗神道略解』は財津香雪著。筑紫史談付録。大正12年3月の日付あり。本文21ページ。豊後・日田の著者が神道を説く。巻末に「大和民族繁殖略図」が折りたたまれてゐる。日本を中心にした地図で、上が九州、下が本州。北海道はない。九州の中に神名が記され、日向には国常立神、福岡あたりに天照皇大神。凡例に「地球外ハ総テ宇宙天津神所在」などとある。

 第六章が「高天原ノ所在」。高天原はどこか漠然としたところにあるのではない。ズバリ「高天原ハ世界ノ周囲地面ヲ離ルヽ上空凡ソ二十里ノ所テアル」。地上から20里のところに高天原はある。心霊は空気のあるところにゐて、空気がないと活動できないといふ。

心霊ハ右ノ場所ニ平定セラレテ、此土ヲ照覧ナサセラレテ我々ヲ守護セラレテ居事モ悟了セラルヽデアル 

  人の心霊は死んだら、純直のものは高天原に行くが、たいていは妄想妄念、煩悶があって困難である。人間や動物に生まれ変はる。また、どこへも行けない心霊もある。

心霊ガ高天原ニモ、地獄ニモ行カズ、磁力的流動体ニモ和合セズ、個体的ノ儘空間ナリ草葉ノ蔭ニ沈淪シテ非常ノ苦ミヲ受ケルノデアル 

  高天原に昇れるやうに天之御中主神などの神々に祈るのが神信仰の目的だといふ。

 第七章「神々ノ御利益」では真言宗の三密加持の修法、身密・語密・意密を挙げた上で、神道にも応用。「身ノ動作ト言葉ト正直ノ心」で祈れば天津神の加護を受けられるといふ。意密が神道では正直となってゐる。